様々な理由で職場を退職・転職してしまったけれど、もう一度同じ職場で働きたいという思いを持った事がある看護師もいるでしょう。
看護師の出戻り転職は、別の職場に転職した後、元の職場に転職して戻ってくることを指しています。
転職した後に「もともとの職場の方が良かった」と気づくこともあり、それが出戻り転職になり、看護師不足の現状を考えれば行う人は少なくありません。
看護師が以前の職場に出戻り転職する時の注意点や、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
目次
看護師が以前の職場に出戻り転職は可能?
看護師が以前の職場に出戻り転職する事は、もちろん可能です。
看護師が「もう一度働きたい」と希望し、雇用する側も「もう一緒に一度働いてほしい」と思えば雇用契約が成立します。
しかし、これには条件があり、以下で詳しく説明していきます。
看護師が出戻り転職する条件について
看護師が出戻りする条件は、辞める時に波風を立てないように辞めていることが大切です。
つまり、円満退職を行えた病院・施設などが出戻り可能といえ、スムーズに転職して働き始めることが可能です。
例えば、
- 夫の転勤についていく事になった
- 育児とのバランスで両立が難しくなった
以上の退職理由であれば、辞める時も再就職する時も、周囲の人々からの反発は少ないでしょう。
ところが、
- 人間関係でもめたため退職した
- 引き止められたのに辞めたい一心で職場の悪口を言って辞めた
以上の事があると、その情報は院内や施設内に行きわたっている可能性が高く、出戻りしにくくなってしまいます。
もちろん、円満退職出ない場合でも採用する雇用側が問題なければ出戻りが可能ですが、今後働く環境を考えるとおすすめはできません。今出戻りを行いたい看護師の方も、現在働いている職場に出戻る可能性もあるため、円満退職が基本と言えるでしょう。
また、出戻れないと考える方は、同じ条件の職場を看護師転職サイト(看護師専用の転職エージェント)で探す(求人を提案してもらう)と良いでしょう。
看護師が出戻りを許されている理由とは
看護師以外の一般企業では、基本的に出戻り転職は歓迎されません。
(一部のベンチャー企業などは推奨している場合もあります。)
また、企業によっては出戻り転職が一切認められていない、つまり採用されないというケースが少なくありません。
しかし、看護師は意外と出戻りを行う風習があり、その理由としては、
- 看護師が不足している状態で雇用側から歓迎されやすいこと
- ライフスタイルの変化で辞める看護師が多いこと
などが、出戻りが多い理由として挙げられます。
一般企業よりも待遇が良い職業であることを今一度、認識しておきましょう。
出戻る期間について
看護師が出戻る病院・施設などの雇用側が納得することが出来れば、出戻る期間はさほど関係ありません。
しかし、「退職後3日で出戻りの面接を受けること」などは、雇用側に不信感を与えかねないため、おすすめはできません。
4月・10月などの期の変わり目や、その病院・施設の看護師が不足する時期に出戻りを希望するとスムーズと言えるでしょう。
半年、1年程度の出戻り転職が一番多いと言えます。
また、3年、5年過ぎて出戻りする場合は、担当者も人材も変わっていることが多く、新しい入職と変わらない場合もあるため、出戻りの気持ちではなく転職する気持ちで臨みましょう。
出戻り転職する看護師のメリットとは?
一般的に出戻り転職を行う看護師のメリットを説明していきます。
組織風土を既に理解できている
転職の失敗例のうち、「休みやすさなどの雰囲気が聞いていた事と違った」、「職場の雰囲気そのもの、組織風土自体が合わなかった」という事は、実際入職してみて判明する部分もあり、起こりやすい事例です。
その点、既に勤務経験のある職場に戻る場合、ギャップが少ないため働きやすさを感じるでしょう。
業務に慣れているため、即戦力になれる
転職して環境が変化した時に感じやすいストレスには、新たな環境(物や人間関係など)になじむ事が挙げられます。
以前の職場に戻る場合、少なくとも物質面の環境は慣れている場合が多いですし、知り合いがいる、自分の事を知っている人がいるというのはストレスの軽減につながります。
そのため、転職後の環境に慣れるにあたりストレスが少なく済み、業務に慣れる事そのものに集中しやすいでしょう。
一から覚えることが少なくなる
病院によっては、仕事内容は同じでも、仕事のやり方などが違うものです。
しかし、出戻りの場合は、すでに仕事のルールを把握している状態であることがほとんどのため、一から覚えることが少なくなることがメリットといえます。
転職後の後悔がない(少ない)
以前働いていた職場なので、仕事内容や人間関係や職場の雰囲気を十分に理解している場合が多いです。
そのため、転職した直後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することが少ない点もメリットと言えます。
出戻り転職する看護師のデメリット
出戻りする場合のデメリットは、メリットよりも少ないですが、考える必要があるデメリットが多いため、確認していきましょう。
良くも悪くも以前の自分のイメージを持たれている
出戻りの場合に周囲の人々(看護師・スタッフ)は自分に対して先入観を持って見てくる可能性は大いにあります。
良くも悪くも以前の自分のイメージを持たれていることはデメリットと言えるでしょう。
良いイメージを持たれていてもデメリットとなる
以前の自分に対し良いイメージを持たれていても、必ずしもメリットであるとも限りません。
例えば、退職前は独身でリーダー業務などをこなしバリバリ働いていたけれど、今回は子供がいる状態で再就職したなど、自分自身の状況が変わっている場合は注意が必要です。
出戻りをすると周囲はどうしても即戦力となる事を期待しますが、それに自分が応えられない事も起こりえるからです。
イメージを持たれている場合は、自分勝手に落胆するのではなく、周囲の人達とのコミュニケーションを大切にして、現在の自分を知ってもらう努力が必要でしょう。
出戻り看護師に対して良く思わない同僚や先輩がいる
自分では出戻り転職はメリットだと思っていても出戻り看護師に対して良く思わない同僚や先輩看護師がいることも理解しておかなければいけません。
以前はそれほど犬猿の仲ではなかった同僚の看護師が、実際に働いてみると意地悪をされることや、嫌がらせをされるということは少なくありません。
どんな風に辞めたのか、どんな風に他人に思われていたかが、はっきりと出てしまう点は、出戻り転職を行う看護師のデメリットと言えます。
補足説明
どんな風に辞めたかによっては、出戻った後に人間関係で辛い思いをすることになってしまうため、出戻らずに別の転職先を探したほうが良いというケースもあります。
なぜ出戻り転職したのか分からなくなる
特に注意したいのは職場の雰囲気や人間関係が嫌になって転職したという場合です。
隣の芝は誰でも青く見えるものですが、嫌だなと思っていた環境でも実際に去ってみると嫌なことが記憶の中で和らぎ、「今考えるとそれほど嫌ではなかったかもしれない」と言う気持ちになることが多いものです。
昔を懐かしく思う気持ちも相まって出戻り転職をすると、「分かっていたはずなのに、どうして戻ってきたのだろう?」と自問自答する羽目になってしまう可能性があります。
また、出戻り転職した場合は簡単には辞めにくいと思っていたほうが良いでしょう。
もちろん退職することは可能ですが、辞める際にはそれなりの退職理由が必要になります。
出戻りする看護師のキャリアアップについて
出戻りする看護師の中には、キャリアアップのために出戻り転職をする看護師が沢山います。
例えば、忙しい職場で育児との両立が難しいという理由退職、その後、日勤のみの職場へ転職し、育児で手がかからなくなったから出戻り転職するというパターンです。
出戻り転職でもキャリアアップに支障はでない
出戻ったからと言ってキャリアアップに支障が出てしまうことはありませんし、出戻りだと昇進できないということもありません。
(一般論であり、職場によって違いがあるため注意しましょう。)
しかし、辞め方によって、
- 戻ってきた後の人間関係が複雑になってしまうこと
- 嫌な思いをする機会が増えてしまうこと
などはありますので、その点は気を付けたほうが良いでしょう。
キャリアアップ支援体制を理解した上で出戻りが可能
出戻りの場合には、以前働いていた時に、どんなキャリアアップ支援体制が完備されているのかを理解しているわけです。
キャリアアップと言っても看護師によって目標は異なります。
そのため、目的に応じたキャリアアップができる病院なら出戻る価値は十分にあります。
看護師が出戻り転職する際の注意点
看護師が出戻り転職を行う場合に、行いたい注意したい点や心構えを解説していきます。
前回退職をした理由と、出戻り転職をしたい理由を考えること
前回退職した理由が家族の転勤などであれば、その状況が解消さることで、出戻り転職もスムーズでしょう。
しかし、
- 「給料が安い」「残業が多い」といった待遇面
- 「人間関係に疲れた」
以上のような場合は、現在もその状況が変わっていない可能性があります。
「どこの組織に行っても同じだとわかったから、元の職場に戻りたい」と考える看護師もいますが、雇用側がそういった姿勢を快く思わない場合もあります。
前回退職した理由と、出戻り転職をしたい理由を照らし合わせ、戻る事で自分の希望するものが本当に得られるのか、現在の職場では得られないものなのかを十分に検討しましょう。
人間関係は持ち越さず謙虚な気持ちで出戻ること
以前勤務していた際に、自分の部下や後輩だった人と接する時は、特に意識する必要があります。
自分が離れていたほんの数年でも、相手の看護師はその組織で働き続け、貢献し続けた人です。
自分が出戻り転職を行った場合、看護師歴が後輩であっても、自分の知らない数年間を知っている「先輩看護師」になるのです。
以前の人間関係を持ち越さず、基本的には周囲の人々は皆先輩である、という謙虚な気持ちで、新たな人間関係を築くという意識が必要です。
補足説明
実際に、後輩看護師が昇進して管理職になっている場合もあります。
いつまでも「あの看護師は私の後輩だったから」という意識が残っていると、上司に対する礼儀がなっていない人、業務を教えてもらうという謙虚な姿勢が足りない人、とみなされてしまいます。
そのため、新しい職場に転職する気持ちでスタートしましょう。
詳しくは「看護師転職で新しい職場で最高のスタートをきるための4つのポイント」を確認してください。
転職サイトを利用せずに直接応募・相談すること
看護師として出戻り転職する場合に、「以前の職場が看護師求人を募集していたため」などの理由で、出戻りを決意する看護師の方がいます。
その場合、「看護師転職サイト」や「看護師の求人が掲載されている転職サイト」などの求人斡旋会社を利用することはNGといえます。
転職サイトは多かれ少なかれ、求人募集のための広告費を掛けて募集しているからです。
あなたが転職サイトを利用して出戻り転職を行う場合、広告費を転職サイトに病院側が支払うことになり、快く受け入れてもらいにくくなります。
看護師不足だからといっても、マナーは守りましょう。
出戻りを検討しながら、求人を探したい場合は、看護師転職サイト(看護師専用の転職エージェント)を利用し、出戻り先の求人を紹介された場合は、断ることが無難だと言えるでしょう。
看護師転職サイトは「看護師転職サイトおすすめベスト5選!人気の15社を徹底比較」を確認しておきましょう。
以前の事を口に出さないこと
出戻り転職を行った場合、仕事内容などは客観的に評価できてしまう事が考えられます。
しかし、安易に「以前の方がよかったのに」「昔のやり方の方が良くない?」などのことは、口に出さないでください。
自分がいない間に、様々な理由があり、様々な人の労力によってその変更が行われた可能性があります。
その期間に不在にしていた自分が評価を口に出したところで、良い変化をもたらす事はないばかりか、自分自身や周囲の人々に悪影響をもたらす可能性の方が高いです。
注意点
ほんの数年でも、業務内容や手順、ちょっとした決まりが変更になる事はよくあります。
場合によっては病棟編成や看護体制など組織全体に関わる大幅な変更が行われている場合もあるため注意しましょう。
働き始めたら何事も確認しながら業務にあたること
出戻り転職を行った場合、数年程度のブランクであれば周囲の人は尚更「以前も働いていたから業務内容や手順を覚えているだろう」と思ってしまいます。
また、自分自身もそう思うことでしょう。
ところが、医療はたった1年でも変わってしまう事はよくあり、元々働いている看護師達はそれがいつから変更になったかは覚えていられません。
確認する事に不満を抱かれる事は少なく、何事も「これはこういうやり方で合っていますか?」などと確認しながら業務にあたることを心がけましょう。
出戻りする職場への履歴書志望動機例文
出戻りする職場への履歴書には志望動機が必要です。ここでは例文を3つご紹介します。
志望動機例文1
「進学のために退職しましたが、進学で学んだ事をふまえてどこで働くかを考えた時に、患者さんに真摯に向き合う貴院の看護師の方々と再び一緒に働きたいと思いました。」
志望動機例文2
「家族の転勤のために退職しました。その後の勤務先でがん化学療法看護を経験し、もっとこの分野を経験したいと感じました。そのため、がん化学療法を受ける患者が外来・病棟ともに多い貴院でこれまでの経験と知識を活かして働きたいと思いました。」
志望動機例文3
「前回転職を経験した事で、あらためて患者中心の看護を実践する貴院の看護の素晴らしさを実感し、再び働きたいと思いました。」
志望動機のポイント
前回退職した理由が進学や家族の転勤、介護などの場合は率直にそのまま書けばよいでしょう。
しかし、転職先を退職した一番の理由が人間関係のこじれ、給与の問題などネガティブなものだった場合は、率直に書き過ぎないようにしましょう。
自分が雇用主の立場だったら、
- 出戻りする人に対してどんな事を知りたいか
- どんな人に戻ってきて欲しいか
- どんな事を期待するか
などを考えてみましょう。
もちろん、今の自分にないものや、状況に合わない事を無理に書く必要はありません。
詳しくは以下の内容を改めて確認しておきましょう。
看護師の志望動機 |
---|
看護師転職時の履歴書・書き方マニュアル |
看護師転職の志望動機例文集 |
良くある質問
はい、可能です。
看護師特有ですが、別の職場に転職した後、元の職場に転職して戻ってくることは少なくありません。
ただし、転職サイトを使わないことや、謙虚な気持ちで新しく働くことなど、注意点があるため当ページを確認しておきましょう。
また、子育てがいったん落ち着いてキャリアアップなどでの出戻り転職も多いと言えます。
- 良くも悪くも以前の自分のイメージを持たれている
- 出戻り看護師に対して良く思わない同僚や先輩がいる
- 不満で転職した場合、なぜ出戻り転職したのか分からなくなる
一般的な出戻り転職を行う看護師のデメリットは以下の通りです。
また、慎重に転職活動をしないと、退職することがプレッシャーとなり辞めにくくなる場合があります。
以前に退職した退職理由にもよると思いますが、看護師の出戻り転職は少なくないため、恥ずかしいことではありません。
ただし、安易に辞め、すぐに戻ってくると恥ずかしいと思います。
戻りたい状況なので看護師として耐えることが可能なのであれば、出戻り転職を行うべきでしょう。
まとめ
出戻り転職は、その組織の風土などを既に知っているため即戦力にもなりやすく、新しい環境に慣れるためのストレスも少なくて済む場合が多いです。
以下の注意点を改めて確認しておきましょう。
ただ、以前に退職した時の理由によっては、再び退職したくなってしまう可能性もあり、退職時にトラブルがあった看護師は、例え再度雇用されたとしても働きにくさを感じる可能性もあります。
出戻りといっても、即戦力を期待されている事を意識しながらも、何事も確認しながら新たに覚え直す位の謙虚な気持ちで働く事が大切です。