看護師の職場で「仕事を教えてくれない」これって普通？転職すべき？

看護師の仕事を学ぶには、独学だけでなく、現場で先輩看護師から直接指導を受けることがとても大切です。

しかし、職場によっては、質問をした際に「そんなこと自分で考えてよ」「なんでも聞かないで」「他の人は自分で調べてるよ」といった冷たい対応をされることもあります。こうした経験がある方は、「仕事を教えてくれない看護師の職場」で働いている可能性があるかもしれません。

この記事では、私の実体験をもとに、なぜ看護師の職場で「仕事を教えてくれない」という状況が起こるのか、それは普通なのか異常なのか、今の職場で我慢すべきなのか転職を考えるべきなのか、そして今できることは何かという点についてお伝えしていきます。

今の職場に違和感を覚えている方や、もっと教育体制が整った環境でしっかりと学びたいと考えている看護師の方にとって、少しでも参考になる内容であれば嬉しいです。

執筆・監修看護師

佐藤ゆうき 看護師

• エリア：千葉県在住
• 保有資格：看護師
• 経歴：総合病院、クリニック
• 診療科経験：呼吸器外科・内科、消火器外科・内科、循環器内科、心臓血管外科、婦人科、小児科、眼科

都内の総合病院で約6年、その後クリニックで約5年勤務しました。現在は1児の母として子育て奮闘中ですが機会があればまた働きたいなと思っています。

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なぜ看護師の職場で「仕事を教えてくれない」のか？

新人で入った看護師なのに誰も仕事を教えてくれない…。そんな看護師の悩みには、職場ごとの理由や背景があります。以下では、私の体験談をもとに、その原因をいくつかの視点から解説します。

仕事を教えてくれる看護師が少ない、またはいない

たとえ教育体制が整っている病院であっても、現場で働く看護師の意識によって、実際の指導状況・教育体制は大きく左右されます。教えることに消極的な看護師が多い職場では、教育制度があっても形だけになってしまい、結果として「新しい看護師に誰も仕事を教えてくれない職場」になってしまうのです。

特に、「自分も教えてもらえなかったから教えない」という意識が蔓延している職場では、後輩看護師が育ちにくく、負の連鎖が続いてしまいます。こうした職場では、たとえ新しい看護師が入職しても、教えてもらえない環境で業務を覚えるしかなく、そのうち「教えないのが当たり前」という風土が根付いてしまうのです。

これが何年も続けば、職場全体が「教育しない文化」に染まり、新人も中途採用者も定着しにくくなっていきます。

看護師の体験談

中途採用を含む新人看護師に厳しい風土がある

看護師の職場の中には、新人に対して厳しい風土が根付いているところもあります。「自分たちもそうやって育ってきたから」といった理由で、中途採用を含む新人看護師に対して教えるというより、“慣れろ”“見て覚えろ”というスタンスを取る先輩看護師も少なくありません。

特にベテランの看護師職員が多く在籍する病棟や、長年人の入れ替わりが少ない現場では、その傾向が強くなりがちです。こうした職場では、新人看護師が質問しにくい雰囲気があったり、ちょっとしたミスで強く叱責されたりと、精神的に追い込まれてしまうこともあります。

また、資格職である新人看護師を一人前と見なしてしまい、あえて突き放すような指導を「教育」と勘違いしているケースも見られます。

看護師の体験談

看護師の人手不足で教育の余裕がない（教育体制が充実していない）

看護師の職場で「仕事を教えてくれない」と感じる背景には、教育体制の不十分さや人手不足の問題があります。大きな病院や大学病院などでは毎年多くの新人が入職するため、教育係やプリセプター制度等の各種教育制度が新卒看護師も中途採用看護師も整っていることが多いです。

一方で、小規模病院や個人クリニックなどでは、新人看護師を受け入れる機会が少なく、そもそも教育制度が整っていないケースも少なくありません。先輩看護師たちも日々の業務に追われており、中途採用を含む新人看護師に時間を割く余裕がないのが現実です。

このような職場では、仕事は見て覚えるものという風潮が根付いてしまい、新人が孤立しやすくなります。

看護師の体験談

意図的な無視・パワハラの可能性

入職した新人看護師が「仕事を教えてくれない」と感じる場面の中には、明確な指導不足ではなく、意図的な無視やパワハラに近い対応が含まれている場合もあります。

たとえば、質問しても無視されたり、わざと情報を共有してもらえなかったり、「新人看護師だから」という理由で輪の中に入れてもらえない、といった行為です。これは単なる教育不足ではなく、職場内のいじめやハラスメントに該当する可能性もあります。

看護師の職場では、人間関係が閉鎖的になりやすいことや、上下関係が厳しい文化が背景にあるため、こうした行動が「指導の一環」として黙認されてしまうこともあります。また、表面上は優しく接していても、業務上の連携からあえて外されることや、必要な指示をもらえないといった“見えにくい無視”が行われるケースもあります。

看護師自身の問題の可能性も

新しく入職等を行った看護師が「仕事を教えてくれない」と感じる原因が、自分自身にある可能性もゼロではありません。他の看護師たちが特定の人に対して「教えたくない」と思ってしまうのは、教わる側の態度や姿勢が影響していることがあります。

たとえば、指導を受けているのにリアクションが薄かったり、メモを取る様子がなかったりすると、教える側はこの看護師は「やる気がないのかな？」「どうせ聞いてないのでは？」と感じてしまうこともあります。そうなると、次第に「もう教えたくない」「何を言っても無駄だ」と思われてしまい、意図的に教えてもらえない状況が生まれることもあるのです。

このようなケースでは、他の看護師には普通に指導が行われているため、本人だけが「私にはなぜか誰も教えてくれない」と孤立感を抱くようになります。

「仕事を教えてくれない」は普通のこと？異常？何かできることはあるのか？

「仕事を教えてくれない」という状況に直面したとき、自分に原因があるのではと悩んでしまう看護師の方も多いと思います。

結論から言えば、それは異常な状況です。

看護師の職場は医療現場が多く、医療現場はチームで動く職場であり、新人や中途採用の看護師に対して適切な教育やフォローが行われないことは、業務効率だけでなく患者の安全にも直結する重大な問題です。

もちろん、すべてを丁寧に教えてもらうのは難しいという現実もありますが、最低限の業務説明すらない、質問をしても無視される、教える先輩看護師が決まっていない、といった場合は、明らかに職場環境に問題があるといえるでしょう。

「自分で学ぶのが当然」という風土が残っている職場もありますが、それによって新人看護師が放置され、孤立してしまう状況は教育とは呼べません。

看護師自身が教育に関して「これって普通なのかな…」と感じた時点で、すでにその環境はあなたにとって健全ではないのかもしれません。

では、「教えてくれない職場」で働きながら、転職せずにできることはあるのでしょうか？以下に、そのための具体的な行動と考え方を紹介します。

なぜ教えてくれないのか、まず原因を整理する

まずは、中途採用や新人の看護師に「なぜ、仕事を教えてくれない」のかを冷静に整理することが大切です。

看護師全員が教えてくれないのか、一部の人だけなのか、勤務先の職場に教育体制そのものが存在しないのか。現在の看護師の状況によって取りうる対策は大きく異なります。

「仕事を教えてくれない」背景を理解することで、感情的に動くのではなく、現実的な対応を選べるようになるため、まずは原因を整理しましょう。

他の看護師に相談する

「仕事を教えてくれない」と感じる看護師は、信頼できる同期や先輩看護師に、率直に「最近困っていること」を共有してみることがおすすめです。

他の看護師たちの視点を取り入れることで、「自分だけがそう感じていたのではないか」「実は別の理由があったのかも」と、新たな気づきが得られる可能性があるためです。

看護師が一人で「仕事を教えてもらえない」と思い込まず、第三者の声を聞くことが大切です。

上司や師長に相談する

他の看護師に相談した後に、現在の状況で「仕事を教えてくれない」のはおかしいと感じた場合、直属の上司や師長に相談することを行いましょう。

直属の上司や師長に相談することは決して「告げ口」ではありません。「困っている」「うまくいっていない」と伝えることで、指導体制を見直してくれる場合や、他部署への異動など柔軟な対応を提案してくれる可能性もあります。

多くの上司や管理者は退職者を減らしたいと考えているため、建設的な提案をもらえるケースが多いです。

自分から「教えてほしい」と声をかける

看護師が勤務する職場によっては、忙しさのあまり教える時間が確保できていないこともあります。そんなときは、具体的に「〇〇について教えていただけますか？」と自分から伝えてみることで、意外とすぐに教えてもらえることもあります。

教えてもらうことが当たり前と考え、待つだけでなく、自分から動く姿勢も、関係改善の一歩となります。

このように、職場に問題があるとわかってもすぐに転職するのが難しい場合は、まずできる行動を看護師自身が一つずつ取ってみることが大切です。それでも改善が見られなければ、無理をせず新しい環境を探すことも視野に入れてよいでしょう。

看護師として転職すべき？それとも我慢すべき？

「今の職場、誰も仕事を教えてくれない…」そんな状況に悩みながらも、「我慢すべきか、もう転職するべきか」と迷っている看護師の方は多いのではないでしょうか。

結論から言えば、看護師が「仕事を教えてくれない職場」にいる場合、基本的には「早めの転職」をおすすめします。

「自分で調べて覚えればいいのでは？」と思う方もいるかもしれません。しかし、看護の仕事は現場での指導・フィードバックを通じて身につけていくものであり、周囲からのサポートが得られない環境では、技術も知識も偏ったまま固まってしまう危険性があります。

以下では、「仕事を教えてもらえない職場」のリスクと、特に早めに転職を検討すべきケースについて詳しく解説します。

仕事を教えてもらえない職場にいることのデメリット

私が「仕事を教えてもらえない職場」で実際に働いていた経験から、そうした職場にいることのデメリットについて、以下でお伝えします。

1. 正しい看護が身につかない

看護師として成長していくうえで、先輩看護師や他人からの指導や客観的なアドバイスは不可欠です。独学で勉強する姿勢も大切ですが、苦手分野を避けてしまったり、自分では気づかないクセがそのまま定着してしまったりと、偏りが生まれやすいのが実情です。

特に「注射の手技」「患者との接し方」「判断の優先順位」など、実践でしか磨けないスキルは、現場で教えてもらえないと身につきません。間違った知識や方法のまま業務を続けることで、ミスや事故につながる可能性もあります。

2. 患者に迷惑がかかることもある

仕事を教えてもらえない職場では、看護師の情報共有も不十分になります。患者に関する細かい情報（例：「足浴の湯温の好み」「声かけのタイミング」「コミュニケーションの好み」など）が伝わらないまま、看護やケアにあたってしまう場面が増えます。

結果として、患者に不快な思いをさせてしまったり、同じミスを繰り返してしまったりと、現場の信頼関係にも悪影響を及ぼすことになります。

3. 転職後にも悪影響が残る可能性

仕事を教えてもらえない職場に看護師として長くいると、それが「普通」や「あたりまえ」になってしまい、自分が他の看護師に教える場面で同じ対応をしてしまうことがあります。

次の職場に移ったとき、「なぜ教えてくれないの？」「報告・連絡・相談がない」といった声が上がり、人間関係にヒビが入るケースも少なくありません。

つまり、仕事を教えてもらえない職場に看護師として在籍している場合、「今だけの問題」ではなく、看護師としての将来の働き方にも影響する重大な問題です。

すぐに転職すべき看護師のタイプ

仕事を教えてくれない職場において、特に「今すぐ環境を変えるべき」と言えるのは、以下の2タイプの看護師です。

新人看護師

新人看護師にとって、入職から1〜2年の期間は看護師としての「基礎」を築く非常に重要な時期です。この時期に看護師としての正しい知識や技術を教えてもらえないと、偏った方法が定着してしまい、後々の修正が難しくなります。

また、新人看護師のうちは「これは聞いてもいいのかな」「こんなことも知らないの？と思われたら嫌だな」と、ただでさえ質問や相談に臆病になりがちです。そんな時に「誰にも聞けない・教えてもらえない」環境が続くと、強い孤立感と不安感を抱え、離職に繋がりやすくなります。

さらに、教えない文化が根付いた職場では、看護師同士での「報連相」も十分に行われない傾向があり、チーム医療の大切さや、他者と協働する力も育ちにくくなってしまいます。

未経験分野に転職した中途看護師

中途で新しい分野にチャレンジした看護師も、事実上「新人」と同じ立場です。特に以下のような環境では、強いストレスを感じやすくなります。

このような職場では、「前職のやり方と混同してミスをする」「分からないけど聞けない」など、混乱と焦りが重なって心身ともに疲弊しやすくなります。

さらに、看護師としての経験があるからこそ「できて当然」と思われ、フォローが少ない場合もあります。その結果、知識や技術を補えないまま、つらさだけが残る転職になってしまうのです。

我慢するより、前向きな転職を

看護師として「すぐ辞めたら評価や履歴書の印象が悪くなるのでは…」と悩む気持ちはよく分かります。しかし、教えてもらえない環境に我慢して居続けることの方が、看護師のキャリアにとっては大きな損失です。

看護師としての力をしっかりと伸ばすには、

そんな職場環境が不可欠です。あなたが「もっと学びたい」「安心して働きたい」と感じているなら、それは転職という行動に移すべきサインかもしれません。

教育制度が整った職場が多い看護師求人サイト

教育制度が整ったの看護師求人を探す場合には、看護師転職サイト（看護師専用の転職エージェント）を活用することをおすすめします。

看護師転職サイトを活用する理由としては、以下の通りです。

担当者（エージェント）は、職場の細かな情報まで把握していることが多く、インターネットで自分自身で調べる場合と比べて、はるかに質の高い情報を得ることができます。

以下は、利用した看護師に定評があり、教育制度が整ったの看護師求人が豊富な看護師転職サイトです。提案される求人が異なるため、3社とも登録しながら転職活動をすすめましょう。

看護師求人数No.1！レバウェル看護

転職相談	面接対策	条件交渉	退職相談

レバウェル看護（旧：看護のお仕事）は、業界最大級の看護師求人数を誇る転職サイトです。看護師求人数が豊富なため、教育制度が整った病院・施設の求人も多数掲載されています。

たとえば、「プリセプター制度あり」「OJT充実」など、教育体制に関するキーワードでの検索も可能で、職場の教育環境にこだわって転職したい方には特におすすめです。また、職場のリアルな口コミが掲載されているほか、担当エージェントが紹介先の内部情報に詳しく、安心して相談できます。

教育制度が整った職場を探している看護師の方は、レバウェル看護を必ず活用しておきましょう。

公式サイト：https://kango-oshigoto.jp/

教育環境もしっかり把握！ナース専科 転職

転職相談	面接対策	条件交渉	退職相談

ナース専科 転職は、看護師専門の転職支援サービスとして、職場の雰囲気や教育体制に関する情報収集に力を入れているのが特徴です。単に看護師の求人を紹介するだけでなく、「新人指導に積極的か」「フォロー体制はあるか」など、現場の教育文化まで丁寧にヒアリングしています。

また、面接前に病院ごとの特徴や教育スタイルについて詳しく教えてくれるため、「入ってからのミスマッチ」を防ぎやすいのも安心ポイントです。キャリアアドバイザーとの相談を通して、自分に合った学びのある職場を探したい方にぴったりです。

教育体制も人間関係も大事にしたい看護師の方は、ナース専科 転職の活用をおすすめします。

公式サイト：https://www.nursejinzaibank.com/

安心のサポート体制！マイナビ看護師

転職相談	面接対策	条件交渉	退職相談

マイナビ看護師は、転職支援の実績が豊富で、教育体制が整った職場や、働きやすい職場環境の紹介に強みを持つ大手求人サイトです。全国各地の医療機関とのネットワークを活かし、「研修制度あり」「フォロー体制あり」といった条件で求人検索できるのが魅力です。

また、キャリアアドバイザーが実際に医療機関へ足を運んで情報収集しているため、求人票だけでは分からないリアルな情報も得ることができます。

新人教育がしっかりしている職場で、長く安心して働きたい方にはマイナビ看護師がおすすめです。

公式サイト：https://kango.mynavi.jp/

まとめ

「怒られているうちが花」と言われるように、指導されることが多いときはつらく感じることもあるかもしれません。
けれど、実際に誰からも教えてもらえない環境に身を置いてみると、「教えてもらえることのありがたさ」に気づかされる場面は少なくありません。

看護師の職場は、お互いに教え合いながら成長していく場です。
仕事を教えるという行為には、その人の時間と労力、そして「相手に成長してほしい」という思いが込められています。
その環境があるかどうかは、職場としての健全さや教育文化の成熟度を表す大きな指標でもあります。

また、新人看護師にとっては「分からないから教えてもらって当たり前」という受け身の姿勢になりがちですが、現場では積極的に学ぼうとする姿勢を見せることが何より大切です。
やる気や前向きな態度は、先輩看護師に好印象を与え、さらに多くのことを教えてもらえるきっかけにもなります。

今の職場が、あなたにとって「学べる環境」なのかどうか。
そして、あなた自身が「学ぼうとする姿勢」をしっかり持てているかどうか。
もう一度、振り返ってみてください。

環境と自分、両方を見つめ直すことが、看護師としての成長と働きやすさにつながっていきます。

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参考文献等

• 厚生労働省：探検・発見・看護！
• 日本看護協会：看護師のワーク・ライフ・バランス
• 厚生労働省：看護職員の現状と推移
• 厚生労働省：看護職員就業状況等実態調査結果
• 厚生労働省：看護師のキャリアと働き方支援サイト
• 厚生労働省：いきいき働く医療機関サポートWebいきサポ
• 職業紹介優良事業者認定制度
• 適正な有料職業紹介事業者の認定制度
• 労働基準法 | e-Gov法令検索
• 職業安定法 | e-Gov法令検索