障害者支援施設で働く看護師の仕事内容と体験談
私は障害者の方に携わる看護をしたいと考え、障害者支援施設で6年近く働いている看護師です。施設未経験の私が働き始めて分かったことですが、実際はなかなかうまくいかないことも多々あり、転職当初のイメージや理想と、現実は違うのだなと痛感しました。
障害者支援施設で働いた私の経験をもとに、看護師の仕事内容や私が働いて感じたことを説明していきます。
執筆・監修看護師- エリア:東京都在住
- 保有資格:看護師、介護支援専門員
- 職務経験:総合病院(病棟・外来勤務)、クリニック、特別養護老人ホーム、障害者支援施設
- 診療科経験:ICU、外科、形成外科、泌尿器科、小児科、内科、皮膚科、脳外科
これまで病院では救命病棟から外来まで、そして今は特別養護老人ホームと障害者支援施設で働いている(シングル)ママさんナースです。介護支援専門員の資格も持っています。自分にあった「看護師としての働きかた」を見つけられるようにアドバイスしていけたらと思っております。
看護師が知りたい障害者支援施設について
看護師として障害者支援施設に興味があり、転職等の候補先となっている場合に、知りたい情報をまとめています。
障害者支援施設とは?
障害者支援施設とは、主に生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、施設入所支援等の複合サービス(障害福祉サービス)を提供する施設であり、介護・援助が必要となり、自宅で生活が難しい障害者が入所している施設となります。
生活介護を受けている障害支援区分で区分4以上、50歳以上なら区分3以上が対象となります。
主に、管理者・責任者、生活支援員、職業指導員、就労支援員、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などが働いている職場となります。
障害福祉サービスとは?
障害福祉サービスとは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所(ショートステイ)、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助及び共同生活援助(グループホーム)のことをします。
出典:障害者自立支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
障害者自立支援法が2006年に施行され「障害者支援施設」という障害者に対する複合サービス施設が生まれました。
障害福祉サービスの種類詳細
障害福祉サービスについては、入所と通所、障害児通所に分けることが出来ますが「障害者支援施設」で行っている障害福祉サービスは「入所」する場合が多いと言えます。
入所型サービス | 施設入所支援 |
---|---|
共同生活援助(グループホーム) | |
短期入所(ショートステイ) | |
通所型サービス | 就労移行支援 |
就労継続支援A型/B型 | |
自立訓練(生活訓練/機能訓練) | |
宿泊型自立訓練 | |
生活介護 | |
地域活動支援センター(1型/2型/3型) | |
日中一時支援(日帰りの短期入所) | |
障害児通所支援 | 児童発達支援センター |
医療型児童発達支援センター | |
児童発達支援 | |
放課後等デイサービス | |
居宅訪問型児童発達支援 | |
保育所等訪問支援 |
看護師が転職時に知るべき障害者支援施設の種類
障害者支援施設は様々な分類方法がありますが、以下では看護師として働く場合に知っておきたい障害者支援施設の種類を説明しておきます。
障害者別 | ・知的障害者支援施設 ・身体障害者支援施設 ・精神障害者支援施設 |
---|---|
施設別 | ・障害者の更生施設 ・障害者の生活施設 |
障害者支援施設は、多機能型事業所のため、先天性や後天的な知的障害者や身体障害者、精神障害者を問わず、対象要件を満たしている障害者を受け入れていますが、施設によっては、知的障害者、身体障害者、精神障害者を専門的に受け入れている場合があるため注意しましょう。
さらに、障害者支援施設には「障害者の更生施設」と「障害者の生活施設」に分かれる場合があり、看護師としては「障害者の生活施設」に勤務することが一般的となります。
看護師が障害者支援施設へ転職する場合のチェック事項
看護師が障害者支援施設へ転職を考える場合、通常の確認項目(給与や福利厚生等)とは別に以下をチェックすることがおすすめです。
- 障害者支援施設での看護師の仕事内容の詳細
- 障害者支援施設での医療処置の有無や種類
- どのような入居者が多いのか(知的障害・身体障害等)
- 入居者の年齢(大人か子供か等)
- 急変時の対応方法
- 看護師の配置・体制(常時何人勤務か等)
以上のことは把握した上で、その障害者支援施設へ転職するかどうかを検討してください。
また、初めて障害者支援施設に勤務する看護師の方は、面接前後に施設見学を行っておきましょう。
看護師の体験事例
また、更生施設、生活施設によっても看護師の仕事内容は異なります。
障害者支援施設で働く看護師の仕事内容
障害者支援施設の場合、看護師の他に、管理者や責任者、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、生活支援員、介護士、医師(嘱託医)などが場合に応じて働いています。
私の経験から、障害者支援施設で働く看護師の仕事内容を説明していきます。
入所者の生活補助
障害者支援施設に入所されている方の中でも症状の程度は人それぞれですが、施設に入所しなければならない方は、一般的に日常生活を自力で行うことが困難なケースが多いといえます。
看護師は障害者をサポートし、生活介助することが重要な仕事となります。
具体的な仕事内容としては、
- 排泄介助
- 食事介助
- 定期的な着替え
- 体勢替え
などが挙げられます。
これらは障害者支援施設に勤務している生活支援員・介護士等が行う場合も多いですが、施設によっては看護師の仕事であるケースも少なくありません。
看護師の体験事例
入所者の健康管理
入所者の健康を適切に管理するのも、障害者支援施設の看護師ならではの仕事と言えます。
例えば、
- バイタルチェック
- 問診
- 服薬指導や管理
- てんかんや自傷行為等の異常行動に対する対応
- (重度の障害の方)人工呼吸器等を用いた看護
など、看護師の仕事内容は多岐にわたります。
看護師の体験事例
また、精神薬を多数服薬している入所者は便秘になりやすく排便コントロールが必須でした。
あまり状態変化がない場合が多かったため、入所者のことに意識を持たなければ簡単にできる仕事のようにも感じます。
入所者の観察
看護師が毎日行う仕事として、先ほど説明した問診や血圧測定などのバイタルチェックがあります。
ただ記録をするのではなく、入所者の様子を細かく観察することが看護師の仕事です。
もし、少しでも普段と違う様子があれば、速やかにチームのメンバーへ報告し、必要な時に医師へ連絡し、早めに治療を行えるように努めます。
看護師の体験事例
また、介護スタッフが困った場合にも適切な指導が必要になります。
医療行為
障害者支援施設では、病棟などで行う看護師としての看護業務がほとんどありません。
実際行う看護師の医療行為としては、
- バイタルサインの測定
- 傷の処置
- 採血の指示があれば採血
- 回診の補助
- 予防接種の補助もしくは実施
- 健康診断時の補助
- 服薬管理
などになります。
看護師の体験事例
そのため、例えば元々持っている既往からくるもの(てんかん発作)や情緒の乱れから来る自傷・他害行為などをいち早く察知できるスキルが看護師に必要だと言えます。
「今日はなんだかいつもより落ち着きがないな」「発言がいつもよりおかしいな」等いつもと違う行動が見られたら特に注意して観察しておくことが必要でした。
働くスタッフである生活支援員にも注意喚起をすることも重要でした。
例えば、何か入所者に異常があった際は、すぐに伝えるように依頼するなど、看護師だけではなく、他の職員の目でも観察していけるようにしていました。
入所者が服用する薬の管理
障害者の中には薬を処方されている方も多くいます。
薬は飲み方を間違えると医療事故に繋がりかねないため、看護師は薬の管理を行うことも大切な仕事です。
看護師の体験事例
障害者支援施設では、てんかん発作がいつ起こるかわかりませんし、自分で症状を訴えられる入所者が少ないため、自分の知識と五感を使って判断しなくてはなりませんでした。
施設の感染予防
障害者支援施設では院内感染を起こすケースも少なくありません。
看護師は、常に感染症予防マニュアルを熟読しておき、スタッフと協力して院内感染予防の為の対策を立てることも大切な仕事となります。
入所者の家族への対応
障害者支援施設に入居されている入所者の家族は、とても熱心な方が多い特徴があります。
しかし、中には、入所者家族からの協力体制もなく、施設に対しての苦情などがあることが実情です。
他のスタッフも看護師も対応しなければならない仕事の一つとなります。
看護師の体験事例
正確に伝えるためには、日ごろから職員との係わりから情報を得ることや、入所者の変化に気づいて行かないといけません。しっかりとした情報をまとめて医師やその家族に報告することも施設看護師のスキルとして大切なものです。
障害者支援施設で看護師として働いて感じたこと
私が障害者支援施設の看護師として働いて感じたことを説明していきます。
未経験でもスムーズに勤務できた
私は病院に勤務しており、初めて障害者支援施設へ転職しましたが、未経験でも働きやすく、施設側も私を歓迎してくれましたし、研修が充実していました。
障害者支援施設は医療行為が少ないことから、ブランク明けの看護師としても復職しやすい環境ではないかと感じます。
また、勤務してから知ったことですが、精神科での看護経験や介護関連の経験がある看護師は是非採用したいそうです。しかし、障害者支援施設では、看護技術を利用する仕事があまりありないため注意が必要です。
命の危険がある入所者は少ない
障害者支援施設には命に危険のある状態の入所者は少なく、急変などがあまりありません。
健康的には問題のない人が多く、安心してケアを行うことが出来ました。
しかし、最近では、障害者の高齢化が進んでおり、高血圧や脳梗塞、そして癌なども発症する入所者もいるため注意が必要です。
入所者とコミュニケーションが取りやすい
障害者支援施設の場合、入所者一人ひとりとコミュニケーションがとりやすく、向き合った看護ができました。
また、入所者の移動は比較的少なく、毎日顔を合わせる相手の看護となるため、やりがいや、達成感は得やすいと感じます。
障害者の看護は人を支えると言う行動に直結するため、病院勤務とは違ったやりがいがありました。
学び勉強することが必須
障害者支援施設では看護師として勉強すること、学ばなければいけないことが実際には多い印象でした。
私が行った勉強は、
- 精神疾患
- 発達障害等、障害に関して
- 通常の疾患に関して
- 薬に関する知識
などを看護師として学んでいく必要がありました。
また私は、外部の研修に参加し、自分自身でスキルアップを行っていました。
障害者支援施設の看護師求人が多い転職サイト
障害者支援施設の看護師求人を取り扱っている看護師転職サイト(看護師専用の転職エージェント)はとても少ないと言えます。
そのため、以下でご紹介する看護師転職サイト2社に登録を行い、希望条件に合う求人を見つけることが転職活動のコツです。
また、最初に説明した「仕事内容の詳細、医療処置の有無や種類、どのような入居者が多いのか、急変時の対応方法」などは、専任の担当者に面接前に確認してもらうことで、効率的な転職活動を行うことが可能です。(施設見学のアポイントも担当者が行ってくれます。)
ハローワークの障害者支援施設求人もカバー!レバウェル看護
転職相談 | 面接対策 | 条件交渉 | 退職相談 |
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サイト名 | レバウェル看護(旧:看護のお仕事) |
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運営会社 | レバレジーズメディカルケア株式会社 |
公開求人数 | 140,163件 (2024年12月2日時点) |
非公開求人 | 豊富 |
対応職種 | 正看護師、准看護師、助産師、保健師 |
対応 雇用形態 | 常勤(夜勤有り)、日勤常勤、夜勤専従常勤 |
対応施設 | 総合病院、一般病院、クリニック、特別養護老人ホーム(特養)、訪問看護、有料老人ホーム、デイサービス、重症心身障害者施設、保育園、検診センター |
対応 診療科目 | 内科、精神科、心療内科、小児科、外科、整形外科、皮膚科、産婦人科、眼科、歯科、美容外科、美容皮膚科 |
対応配属先 | 病棟、外来、施設、訪問、手術室(オペ室)、透析、内視鏡 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
特徴 | ・看護師の転職求人が豊富 ・転職支援サービスが手厚い ・転職の相談から行える ・院内・施設内情報に強い |
レバウェル看護(旧 看護のお仕事)は、看護師転職サイトの中で断トツに求人数が多く、障害者支援施設の看護師求人も豊富です。
さらに、ハローワークの看護師求人もカバーしているため、もれることなく障害者支援施設の看護師求人を探してもらうことが出来ます。
また、利用する看護師にも定評があり、障害者支援施設の看護師求人を探す場合には必ず利用しておきましょう。
公式サイト:https://kango-oshigoto.jp/
障害者支援施設多数!マイナビ看護師
転職相談 | 面接対策 | 条件交渉 | 退職相談 |
---|---|---|---|
サイト名 | マイナビ看護師 |
---|---|
運営会社 | 株式会社マイナビ |
公開求人数 | 82,343件 (2024年12月2日時点) |
非公開求人 | とても豊富(保有求人全体の約40%非公開) |
対応職種 | 正看護師、准看護師、助産師、保健師、ケアマネジャー |
対応 雇用形態 | 正社員、契約社員、パート・アルバイト、業務委託その他 |
対応 勤務形態 | 常勤(二交替制)、常勤(三交替制) 、夜勤なし、夜勤専従 |
対応施設 | 病院、クリニック・診療所、美容クリニック、施設、訪問看護ステーション、看護師資格・経験を活かせる一般企業、治験関連企業(CRA、CRCなど)、保育施設 、その他 |
対応 診療科目 | 美容外科、小児科、産科、婦人科(レディースクリニック)、整形外科、循環器内科、心療内科、消化器外科、心臓血管外科、スポーツ整形外科、脳神経外科、眼科、形成外科、消化器内科、歯科、精神科、血液内科、外科、内科、神経内科 |
対応配属先 | 病棟、外来、手術室、内視鏡室、ICU、透析、救急外来、訪問看護、管理職の仕事 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
特徴 | ・転職の相談から行える ・キャリアアドバイザー親切丁寧 ・退職交渉も可能 ・企業系のレア求人を豊富に保有 |
マイナビ看護師は、障害者支援施設の看護師求人に力を入れており、求人数も他の看護師転職サイトと比較しても豊富です。
また、担当者は丁寧で親切、的確なアドバイスが貰えるとのことで人気もあるため、転職相談を行いたい方にもおすすめです。
上記のレバウェル看護と合わせて利用しておきましょう。
公式サイト:https://kango.mynavi.jp/
まとめ
障害者支援施設では、正社員採用に「病院での経験」や「臨床経験」を問わないケースも多くあります。
そのため、正社員希望者は、未経験だからパート看護師でと考えずに、正社員採用で臨んでみることをお勧めします。
看護師1名体制の障害者支援施設では、頼れる人がおらず、仕事の引き継ぎもまともにしてもらえない可能性があるため「障害者支援施設で働いたことがない・経験が浅い」等の看護師は、複数看護師が在籍している障害者支援施設を選択しましょう。
障害者支援施設への看護師転職は、身体的や仕事内容的には楽で、メリットも多いですが、病院の看護師より精神的に大変な思いをすることが多いと私は感じます。
障害者の看護を行いたいと考えている看護師の方は是非一度チャレンジしてみてください。
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運営会社 | 株式会社peko |
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会社ホームページ | https://peko.co.jp/ |
所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂3丁目1-16 BIビル6F |
代表取締役 | 辻󠄀 昌彦 |
設立 | 2015年6月 |
資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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厚生労働大臣許認可 | 有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-314509 (厚生労働省職業安定局: 職業紹介事業詳細) 特定募集情報等提供事業:51-募-000760 |
連絡先 | 03-5324-3939 (受付時間:休日、祝日を除く10:00~17:00) |
お問い合わせ | https://peko.co.jp/inquiry |
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