産婦人科外来の看護師の役割や仕事内容・やりがい・負担とは?
産婦人科外来にやってくる女性患者は様々な背景を抱えています。
女性器系の疾患を抱えている人、思わぬ妊娠で動揺している人、妊娠を希望していても妊娠が難しく不妊治療で通院している人など、病院の産婦人科外来を訪れる理由は多種多様です。
そして産婦人科外来の看護師は、そのような女性をサポートする立場にいます。
また、産婦人科外来は、1人の看護師としてではなく、1人の女性としても学ぶことが多い診療科です。
このページでは、産婦人科外来の看護師の役割、仕事内容、働くメリットや負担とやりがいについて、私の経験をもとに詳しく説明していきます。
執筆・監修看護師- エリア:海外在住
- 保有資格:看護師
- 施設経験:総合病院
- 専門分野:整形外科、産婦人科、耳鼻咽喉科、脳外科、回復期リハビリテーション科、外来
2児の男の子の母と看護師の両立に奮闘しながら総合病院の看護師として勤め、その勤務経験は10年以上。常勤看護師として小さな子供を抱えながら夜勤もやっていました。現在は夫の都合で海外在住。看護師はしていませんが看護師ライターとして活動しています。様々な科での勤務経験と、看護師と出産・育児との両立経験を生かし、皆さんが知りたいという内容を分かりやすくお届けしたいと思います。
産婦人科外来の看護師に求められる役割とは
産婦人科外来には、毎日様々な内容で受診してくる患者が大勢います。
私が感じた産婦人科外来で働く看護師の役割としては、そのような患者が気持ちよくスムーズに受診できるようにすることだと感じます。
以下で、産婦人科外来で働く看護師の役割について、私の経験から詳しくご紹介します。
妊婦健診の介助を行う
産婦人科外来では、妊婦健診に来た妊婦の介助を行うことが看護師の役割です。
妊婦健診の主な内容は、血圧測定、体重測定、尿検査、腹囲・子宮底長の測定、内診、超音波検査で、他には各週数に応じ各種検査があります。
看護師は健診で来院した妊婦の血圧、体重、腹囲・子宮底長の測定を行い、各種検査の手配や医師や助産師が行う内診、超音波検査の介助を行います。
補足説明
妊婦によっては体調が優れない方もおり、「待合室に具合の悪い妊婦はいないか」「不安など精神的な状態はどうか」など、全体の様子を見ながらスムーズに健診が進むように看護師が介助します。
妊娠中の生活指導を行う
妊娠が確認できてから、出産を迎える際まで妊婦の身体は大きく変化していきます。
その変化について産婦人科外来の看護師は、助産師と共に詳しく説明し、妊婦に生活指導を行うことが役割です。
また、つはり (悪阻)の緩和方法や流産・早産に際し注意すること、お腹が張ったときの対処方法、食事、運動、体重管理等を説明し、安心・安全に妊娠経過が辿れるように指導・援助していきます。
診察や検査の準備や介助を行う
産婦人科外来の看護師は、診察に必要な器具や機械の準備をし、診察時には患者の体勢を確保・維持し、医師や助産師がスムーズに診察できるように介助します。
また、検査が必要な患者の場合、連絡調整や準備も産婦人科外来の看護師が行います。
婦人科系疾患や不妊治療や中絶などの患者の診察も介助します
産婦人科外来は、出産を控える妊婦だけが来院するわけではありません。
癌や筋腫などの子宮・卵巣等の婦人科系疾患をはじめ、不妊治療や中絶などの患者も来院します。
そのため、そのような患者の診察や検査がスムーズに行われるように介助することも大切な看護師の役割となります。
患者の精神的ケアを行う
産婦人科外来には、様々な内容を抱えた患者が受診します。
例えば、喜びにあふれて妊婦健診に来た妊婦もいますし、妊娠経過に不安や悩みを抱えて受診に来た妊婦もいます。さらに、妊婦の横には不妊治療に通っている患者、そして子宮癌などの婦人科系の疾患で受診してくる患者もいます。
病気や疾患のために受診することが目的の他の診療科外来とは違い、産婦人科外来は喜びと不安と悩みが混在した複雑な診療科です。
そのような様々な患者の精神的不安や負担に寄り添い、知識と経験に基づいて指導やアドバイスを行いながら、患者の不安や悩み、ストレスが軽減するように精神的ケアを行うことが、産婦人科外来看護師の大切な役割です。
患者のプライバシーの保護
前述したように産婦人科外来には、妊婦だけでなく、中絶や癌など様々な患者が来院します。
そのため、産婦人科外来で働く看護師は、患者の事情や心情を考慮した対応が必要です。
また、妊婦や患者が診察で内診台に乗ることも多い診療科ため、診察や検査の際のプライバシーの保護も、産婦人科外来で働く看護師の重要な役割です。
産婦人科外来の1日の看護師スケジュール・仕事内容
私が産婦人科外来で看護師として働いた際の、1日のスケジュール例は以下の通りです。
8:30~ | 勤務開始(環境整備、診察の準備) |
---|---|
9:00~ | 午前の診察開始(診察の補助) |
12:30~13:30 | 昼休み 外来が込み合っている場合は休憩時間がずれ込む |
13:30~ | 午後の診察開始(診察の補助) 午前中同様、医師の診察の補助を行う |
17:00~ | 診察終了 |
以下で詳しく産婦人科外来で働く看護師の仕事内容について、体験をもとに時間軸で説明していきます。
8:30:勤務開始(環境整備、診察の準備)について
まず、私が勤務した産婦人科外来では、看護師は出勤後に以下のことを行っていました。
- 患者を迎える前に待合室を整えること
- 診察室では超音波などの機械の立ち上げ
- 使用物品の準備
また、予約診察の場合、来院する患者がどのような検査や治療を行うのかが事前に分かるため、その検査や治療に必要な薬や器具などの物品を予め、看護師が準備します。
産婦人科外来の看護師は、診療が効率良くスムーズに行えるように準備していきます。
9:00:診察(診察の補助)について
受付が終了した患者や妊婦が待合室へとやって来るのを確認しながら、産婦人科外来の看護師はカルテ(電子カルテ等)を準備します。
妊婦検診がある場合は、血圧測定や尿検査、腹囲等の測定を行い、母子手帳に必要事項を記入します。
また、必要な妊婦にはノンストレステスト(NST)を診察前に行い、結果を準備し、すぐに医師が診察に取り掛かれるようにします。
待合室での患者の様子もチェックする
産婦人科外来の看護師は、待合室での患者や妊婦の様子も確認します。
もしも、体調が悪そうな患者や妊婦がいた場合には診察の順番を変更することや、休める場所を確保するなどの配慮も行います。
診察開始後に医師の補助をする
医師の診察が開始したら、必要に応じて血圧や体温などを測定することや、医師が診察や処置がしやすいように患者や妊婦の体を看護師が支えます。
また、医師の診察に応じて器具の手渡し、診察後の患者や妊婦の整えも行い、終了したら簡単な片づけをして次の患者や妊婦を迎えるよう準備します。
場合によっては、検査や薬、次回の診察の説明、妊婦週数に応じた説明なども、看護師が行います。
13:30:診察終了後について
診察終了後は以下の内容を産婦人科外来の看護師が行います。
- 診察室の後片付け、簡単な掃除、物品や薬品の補充
- 翌日の診察準備
- 日誌の記入
- 消灯、施錠
また、消耗品である薬品や滅菌物なども不足はないか確認し、必要があれば補充や請求の手配を看護師が行います。
予約診察が入っている場合で、翌日行う処置などが分かる時には必要物品等を事前に準備しておくこともあります。
産婦人科外来で看護師が働くメリットとは
産婦人科外来では、健康な人、疾患を抱えている人など様々な患者が来院します。妊娠管理以外にも多くの症例と関わることができます。
私が他の診療科と比較して、産婦人科外来で看護師として働くメリットを以下で2つ、体験から紹介します。
外来でも患者により深く寄り添った看護ができる
産婦人科外来で看護師として働き、私がメリットに感じたことは、患者により深く寄り添った看護ができるということです。
看護をするうえで、療養上の世話はもちろん重要な仕事ですが、看護師として大切なことは、どれだけ患者の思いに共感できるか、苦しみや不安、喜びを一緒に分かち合うことができるかということだと私は感じています。
自分の出産時の経験も活かした看護ができる
例えば、自分自身に出産経験があれば、その経験を生かして妊婦や産婦に関わることができます。
- 「自分が妊婦のときも同じようなことがあった」
- 「産後は同じように授乳がうまくいかずにこんな方法をとった」
など看護師として得ている知識だけでなく、経験談を交えて妊婦等に接する方が何倍も説得力があります。
とは言え、出産経験のない看護師もいます。
その場合でも同じ女性として、その訴えや状況に共感することはできます。
- 「自分の気持ちをわかってくれた」
- 「看護師さんも同じ経験をしたことがあるのだ」
などの思いを患者が持つことは、その看護師に対しての信頼感にもつながるため、患者との距離がぐっと近くなります。
専門性の高い知識と技術が身につく
産婦人科はとても専門性の高い診療科です。
一般の診療科と共通する部分ももちろんありますが、やはり妊娠と出産に関わる知識と技術は、この産婦人科特有のものであるため、看護師として多くのことを学ぶことができます。
産科で使用する特別な器具、妊娠管理、産後の管理、どれを取っても専門性の高いものばかりです。
また、外来によっては不妊治療を行っているところもあり、そこでも看護師として高いスキルを身につけることができます。
さらに、中絶に対しての手術を行っている外来であれば、その手術の介助と看護にあたることもあります。
婦人科疾患についても学べる
産婦人科は産科と婦人科からなる診療科のため、同時に婦人科疾患についても看護師として学ぶことができます。
婦人科疾患の場合、生理不順、子宮や卵巣の良性疾患、癌などの悪性疾患と、様々な症状の患者が来院してきます。
手術が必要になる患者には、手術ができる提携病院へ紹介するまでの検査等の準備がありますし、癌に対する抗がん剤治療を外来通院で行う患者もいます。
産婦人科外来の看護師のやりがいと負担
看護師のやりがいと負担は、どの診療科にもあることですが、産婦人科という特殊性の強い診療科では内容も違ってきます。
私が、産婦人科外来で働いたときに感じた、看護師のやりがいと負担について、体験から紹介していきます。
命の誕生に直接関わることのできる喜びはやりがいになる
例えば、妊娠初期から外来通院してくれていた妊婦が、無事に出産を終えて、生まれた我が子と一緒に再び産後の健診などで外来を訪れてくれたときには大きな喜びを看護師として感じます。
お腹にいた頃から、その母子に看護師として関わってきたため、「この子がお腹にいたのか」と感慨深いです。
産婦人科外来の看護師は、命の誕生に関わる仕事だからこそ「おめでとうございます」「ありがとうございます」という言葉がたくさん交わされる、とてもやりがいのある仕事だと私は思います。
補足説明
不妊治療で長く頑張ってきた患者の妊娠が判明したときなどは、一緒に達成感や満足感を感じることができますし、それが看護師のやりがいに繋がります。
様々な感情が交差する診療科であるがゆえに精神的負担も大きい
産婦人科外来だけではなく、どの診療科にも当てはまることですが、看護師の仕事はやりがいばかりではありません。
負担に思うこともあります。特に産婦人科外来は、以下のような精神的負担が多いです。
- 順調に経過していたはずなのに急に胎児の容態が悪くなり、流産や死産となること
- 不妊治療の末にやっと授かった胎児が成長しないこと
産婦人科外来の看護師は患者の不安や心配などの心情をよく読み取りながら、決め細やかな関わりを必要とされるため、患者に感情移入してしまうことがあります。
そのような場合、その辛さや悲しみを一気に感じてしまうため、看護師として精神的に負担を感じてしまうことも多いでしょう。
中絶の場面にも遭遇します
産婦人科外来で働く看護師は、中絶の場面にも遭遇します。
望まれないことや、何らかの事情で出産することができない命を中絶という形で絶ってしまうことが、いたたまれなく辛くなることも多いのが現状です。
このような精神的負担は、産婦人科外来の看護師という仕事には切り離せないものなのです。
まとめ
産婦人科外来で働く看護師の役割や仕事内容が少しでもイメージできたでしょうか。
産婦人科外来の看護師は、日々多くの女性の喜びや悲しみ、痛みなどに共感し寄り添いながら、とても充実した看護を行うことができます。
また、自分自身の出産等の経験を看護に生かしたり、患者との関わりを自分自身の今後に生かすことができたりと、看護師としてだけでなく1人の女性として多くのことを学び、成長させてくれる職場です。
そして、それが産婦人科外来で働く看護師の魅力です。
この記事で、皆さんが産婦人科外来により興味を持っていただけたら幸いです。
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