災害支援ナースの活動内容の体験談!なるために必要な資格や研修
看護師として災害看護に興味があるけど「災害支援ナースになるためには、どうしたら良い」「実際にはどんな活動を行うのか不安」などのことから、一歩前へ進めない方もいるのではないでしょうか。
近年、日本国内だけではなく世界中で様々な災害が起きており、被災地での看護師の役割や存在が大きく期待されています。
さらに、2024年4月から都道府県知事の求めに応じて派遣される「新たな災害支援ナース(災害・感染症医療業務従事者)」となります。
以下では、私の経験をもとに新たな災害支援ナースについての詳細説明、新たな災害支援ナースになるには、私の災害支援ナースの派遣歴(体験談)、災害支援ナースの活動内容や役割(避難所)等を説明していきます。
用語説明- 現行の災害支援ナース:2009年より看護協会で実施されていた災害支援ナース制度(2023年で終了)
- 新たな災害支援ナース:2024年4月から都道府県知事の求めに応じて派遣される災害支援ナース(災害・感染症医療業務従事者)
新たな災害支援ナースについて
2024年4月から「現行の災害支援ナース」は「新たな災害支援ナース」への変更となります。
※現行の災害支援ナース制度については、2023年で終了します。
※なお、以下で説明する内容は2023年8月17日時点の内容となります。
以下では、新たな災害支援ナースについて詳しく説明していきます。
災害支援ナースとは?
災害支援ナースとは、看護職能団体の一員として、被災した看護職の心身の負担を軽減し支援する役割を果たすと同時に、被災者が健康な状態を維持できるよう、被災地で適切な医療・看護を提供する役割を担う看護職のことを指します。
日本看護協会では、「現行の災害支援ナース」を以下のように述べています。
災害支援ナースとは、看護職能団体の一員として、被災した看護職の心身の負担を軽減し支えるよう努めるとともに、被災者が健康レベルを維持できるように、被災地で適切な医療・看護を提供する役割を担う看護職のことです。都道府県看護協会に登録されています。災害支援ナースによる災害時の看護支援活動は、自己完結型を基本としています。
出典:日本看護協会 災害看護
以上のように「現行の災害支援ナース」の派遣は自然災害のみが対象となり、法令などの根拠に基づくものではありませんでした。
「新たな災害支援ナース」では、災害と感染症に対応できる看護職の養成・応援派遣・確保を一体的に行うという国(厚生労働省)の動きを受け、自然災害、感染症支援に係る看護職の応援派遣体制の仕組みが新たに構築されます。
看護協会での災害支援ナース制度の終了
2022年12月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律(e-Gov)」が制定されました。
これにより、感染症発生・まん延時における国による広域での医療人材派遣の仕組みや、派遣される医療人材の養成・登録等の仕組みなどが法制化され、DMAT(災害派遣医療チーム)やDPAT(災害派遣精神医療チーム)と並び、災害支援ナースについても都道府県知事の求めに応じて派遣されるものとして位置づけられました。
そのため、2024年4月から「新たな災害支援ナース」への変更となります。
参照:災害支援ナース育成・派遣に関する大切なお知らせ(岐阜県看護協会)
災害支援ナースの応援派遣が変更される
「現行の災害支援ナース」の応援派遣は、災害対応区分に分けられ、レベル1では被災県看護協会が派遣、派遣調整を、レベル2~レベル3では、日本看護協会が派遣、派遣調整を行っていましたが「新たな災害支援ナース」では、都道府県(自治体)の役割に変更されます。
そのため、国の制度による派遣となり、厚生労働省から出されている「新たな災害支援ナース」の基本的な考え方としては以下の通りです。
- 都道府県の派遣要請に基づく活動
- 休暇の取得(ボランティア)を前提としない派遣携帯
- 所属施設ごとの登録
また、所属施設ごとの派遣となるため、看護師は所属先からの在籍出向となり、各都道府県(自治体)から、派遣に要する費用等が負担されます。
災害支援ナースの給料は変わる
「現行の災害支援ナース」は、活動にあたって必要な交通費、宿泊費、日当(数千円)などの支給はありましたが、ボランティアとして活動していました。また、働いている看護師の中には、災害派遣時に有給休暇を取得して派遣する方もいました。
一方、「新たな災害支援ナース」では、2024年4月以降は、各都道府県(自治体)から派遣に要する費用等が負担されることとなります。
さらに、看護師個人の登録から、所属施設ごとの登録へと変わることで、「新たな災害支援ナース」の給与は公費から支給されるようになります。その結果、「現行の災害支援ナース」よりも給与が安定することが見込まれます。
災害支援ナースと災害・感染症医療業務従事者について
「新たな災害支援ナース」と災害・感染症医療業務従事者との関係性は以下画像の通りです。
前述したように、DMATやDPATのように、病院又は診療所に勤務している看護師は、災害支援ナース兼「災害・感染症医療業務従事者」として登録されることになります。
補足説明1:所属施設のない方の場合
病院又は診療所以外に勤務している方や、潜在看護師の方、所属施設がない方でも、新たな災害支援ナースとして登録する(リスト化される)ことは可能です。
しかし、そのような方は原則、応援派遣要請の対象とはなりません。
ただし、災害や新興感染症の状況によって応援派遣を要請される可能性があります。(大規模災害やパンデミック等で災害・感染症医療業務従事者だけでは人材不足となった場合など)
補足説明2:現行の災害支援ナースの方
「現行の災害支援ナース」場合、厚生労働省指定のプログラム「災害支援ナース養成研修」を受ける必要があり、研修内容や受講方法が現行とは異なります。
そのため、災害・感染症医療業務従事者を希望する場合(新たな災害支援ナースを希望する場合)は受講が必要になります。
※現行の災害支援ナースの登録は、制度の終了に伴い登録が削除されます。
補足説明3:災害・感染症医療業務従事者について
災害・感染症医療業務従事者は、医療法(昭和23年法律第250号)で、以下のように定められています。
医療法 第30条の12の2
厚生労働大臣は、都道府県知事の求めに応じて、災害が発生した区域又はそのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、若しくはそのおそれがある区域に派遣されて第30条の4第2項第5号ロ又はハに掲げる医療の確保に係る業務に従事する旨の承諾をした者(医師、看護師その他の当該業務に関する必要な知識及び技能を有する者であって厚生労働大臣が実施する研修の課程を修了したことその他の厚生労働省令で定める基準を満たすものに限る。)を災害・感染症医療業務従事者として登録するものとする。
出典:医療法(e-Gov)
そのため、災害・感染症医療業務従事者は、災害や感染症の発生時に、医療現場で活動する専門の医療従事者のことを指します。
新たな災害支援ナースになるには?必要な資格や研修
「現行の災害支援ナース」になるためには、登録するための以下の要件を満たす必要がありました。
- 都道府県看護協会の会員であること
- 実務経験年数が5年以上であること
- 所属施設がある場合には、登録に関する所属長の承諾があること
- 災害支援ナース養成のための研修を受講していること
しかし、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」が制定されたことにより、2024年4月からは全ての看護職を対象にしており、実務経験等の要件がなくなります。
また、看護師免許以外の資格は必要ありません。
具体的には、「新たな災害支援ナース」になるためは、災害支援ナース養成研修(厚生労働省指定のプログラム)を受講する必要があり、かつ応援派遣されるためには、都道府県で協定の締結を行った医療機関に所属している必要があります。
以下では、新たな災害支援ナースになるための方法ついて詳しく説明していきます。
応援派遣は医療機関と都道府県で協定の締結が必要
新たな災害支援ナースに看護師として登録し、派遣応援に参加するためには、各都道府県と勤務している医療機関での協定の締結が必要になります。
そのため、新たな災害支援ナースになるためには、勤務する医療機関を看護師として選択する必要が出てくるでしょう。
新たな災害支援ナースの場合、看護師の経験年数は関係ありませんが、施設単位での災害支援ナース養成研修の申し込みが必要となるため、現在の勤務先が各都道府県と協定の締結を行っているか確認が必要です。
また、新たな災害支援ナースになるために、医療機関への転職を検討している場合は、以下でご紹介する看護師転職サイトを参照しておきましょう。
施設単位で研修への申し込みが必要
「現行の災害支援ナース」では個人単位での申し込みでしたが、「新たな災害支援ナース」で災害支援ナース養成研修を受けるためには、施設単位での申し込みが必要です。
具体的には、以下のような流れで進みます。
- 施設の看護管理者(医療機関以外は責任者)に研修の申し込みを得ること
- 看護師個人は、指定の申込書①を作成し、看護管理者に提出すること
- 看護管理者は、別の指定の申込書②に記入
- 指定の申込書①②を各都道府県看護協会に郵送等で提出すること
※指定の申込書①②は、都道府県看護協会により異なるため、最寄りの看護協会の公式ページを確認しましょう。
※災害支援ナース養成研修の受講の可否は、看護管理者に通知されます。
所属施設のない方や潜在看護師について
現在看護師として所属施設のない方や潜在看護師の方でも、災害支援ナース養成研修を受講することは可能です。
個人単位での申し込みは不可とされていますが、各都道府県看護協会に直接問い合わせが必要です。
(具体的な内容については、都道府県看護協会の内容を確認してください。)
ただし、災害や新興感染症の状況によって応援派遣を要請される可能性があります。(大規模災害やパンデミック等で災害・感染症医療業務従事者だけでは人材不足となった場合など)
災害支援ナース養成研修(オンデマンド研修と集合研修)
「新たな災害支援ナース」になるためは、災害支援ナース養成研修(厚生労働省指定のプログラム)を受講する必要があり、オンデマンド研修と集合研修に分けられます。
なお、災害支援ナース養成研修(厚生労働省指定のプログラム)の受講料は無料です。
オンデマンド研修は、20時間講義動画視聴となり、終了していない場合は集合研修(2日)を受けることができません。
オンデマンド研修と集合研修を全時間出席した看護師に対し、終了証が発行され、修了者がリスト化されます。
具体的な講義・演習内容については以下の通りです。
オンデマンド研修についてオンデマンド研修について
A総論 (120分) | 災害・新興感染症に係る応援派遣の体制 |
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B災害各論 (540分) | ・災害医療の基礎知識 ・災害時に求められる看護支援活動 ・災害時の心理的変化と心のケア など |
C感染症各論 (540分) | ・新興感染症の基礎知識 ・新興感染症患者の治療と観察ポイント ・新興感染症患者の看護 (軽~中等症/重症)など |
※すでに都道府県看護協会に「現行の災害支援ナース」として登録している方の場合、条件によっては一部受講(B災害各論)が免除されます。
集合研修について
D災害・感染症 (2日間) (講義:60分、災害:270分、感染症:270分) | ・各都道府県における災害・感染症に係る応援派遣時の看護支援活動(講義) ・災害時の感染症の活動の実際 ・新型コロナなど新興感染症の看護 など |
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5年毎の更新研修が必要
災害支援ナース養成研修(厚生労働省指定のプログラム)において、受講終了後も、5年毎に更新研修が必要です。
※2024年4月から始まる制度のため、更新研修については現時点で情報がありません。
新たな災害支援ナースへの登録
災害支援ナース要請研修修了者は、リスト化され厚生労働省及び各都道府県(自治体)、日本看護協会に提出されます。
なお、病院又は診療所に勤務している看護職の方は、災害・感染症医療業務従事者として国に登録されます。
私の災害支援ナースの派遣歴(体験談)
私はこれまで3回、現行の災害支援ナースとして派遣された経験があります。以下は、災害ごとに私の体験をまとめたものです。
少しでも災害支援ナースの活動の雰囲気を感じていただければ幸いです。
九州北部豪雨災害(2012年)
初めて私が災害支援ナースとして活動したのは、平成24年(2012年)7月の九州北部豪雨災害でした。
派遣された時期は、発災から数日が経過した頃で、避難者は自宅に戻れない状況で、福祉センターや最寄りの中学校などに多くの人々が避難していました。
幸いにも、私が災害支援ナースとして活動している間、避難者に大きな病気や怪我、急変が起きたという報告はありませんでした。
ただし、私が避難者に声をかけた際には、「血圧が高い、こんなに高いことはなかった」「眠れない」といった被災によるストレスや不安が原因の症状について多くの訴えがありました。
また、「夜になると苦しくなる」と不安を訴える方に対しては、呼吸が楽になる体勢を提案し、近くでサポートしながら休息するよう促しました。
災害支援ナースとして、私たちが提供できる支援は限られていることを実感しましたが、それでも少しでも役立てることができる喜びを感じました。
この経験は、今でも私の心に残っています。
熊本地震(2016年)
災害支援ナースとしての2回目の活動は、平成28年(2016年)に発生した熊本地震の際でした。その当時、私は熊本県内の病院で看護師として働いていました。
私の勤務していた病院も自宅も地震の影響を受け、水道や電気などのライフラインが途絶えていました。
そのような中、勤務していた病院に災害支援ナースとしての派遣要請があり、上司の許可を得て保健福祉センターに派遣されました。そこで、被災3日目から看護師チームと共に支援活動を開始しました。
当時の状況は、どの方向を見ても被害の痕跡があり、避難所には多くの避難者が非常に狭いスペースに詰めかけていました。
地震発生直後だったため、避難者のリストや位置情報が整理されておらず、健康状態の把握も難しい状況でした。
そのため、最初に私たち災害支援ナースは、避難者個々人に声をかけて情報を集め、避難者の位置を把握する作業を始めました。しかし、避難者の状況は移動したり理由が変わったりするため、何度も情報を更新しなければならない状況でした。
避難所で避難者に「具合はいかがですか?」と声をかけましたが、中には私たち災害支援ナースの援助を受け入れずに断られるケースもありました。
令和2年7月豪雨・人吉(2020年)
3回目の災害支援ナースとしての活動は、令和2年(2020年)7月の豪雨災害で人吉地域に派遣されました。
私が派遣された時点では、災害発生から約3週間が経過しており、道路の片付けが進んでいましたが、まだまだ多くの人々が自宅に帰れず、避難所に収容されていました。
私が災害支援ナースとして活動を始めた直後に起こった出来事として、糖尿病を抱える避難者の方が、濁流によってインスリンや血糖測定器などを含む物品を全て失ったという情報が寄せられました。
幸運なことに、その避難者の方には低血糖症状などの異常は見られず、安定した状態でしたが、かかりつけ医が被災していたために通院が難しく、医療カルテも水に濡れて使用できない状態でした。
また、初めてのコロナ禍での災害派遣となり、体温測定や避難者同士の距離確保など、これまで経験のなかった感染対策が必要でした。
災害支援ナースの活動内容や役割(避難所)
現行の災害支援ナースでは、派遣後に活動する場所は原則として被災した医療機関・社会福祉施設、避難所(福祉避難所を含む)が優先されます。
また、災害支援ナースの活動時期は災害発生後3日~1ヶ月間が目安で、原則(移動時間を含めた)3泊4日での活動です。
以下では、避難所における災害支援ナースの活動内容や役割を私の経験をもとに詳しく説明していきます。
避難者マップ作成
災害支援ナースが避難所に派遣された場合、まずは避難者マップの作成を行います。
避難者マップを作成するためには、以下の情報が必要であるため、被災者に対して災害支援ナースが聞き取りを行います。
- 氏名や住所
- 家族構成
- 持病や現在治療している疾患
- 災害によって受けた怪我の状態
- かかりつけ医
- 使用している薬
- 身体的、精神的な障害の有無 など
災害発生後、被災者が避難所に一斉に集まることで、どこに誰が避難しているのかが分からない状況が生じる可能性があります。
このため、避難者マップを作成することは、被災者の健康と安全を確保する上で、災害支援ナースの重要な役割です。
近年では、避難者の把握のため、避難所へ到着した際には受付で氏名や住所などを記載して情報を収集し、人数制限を設けている避難所も増えています。
この情報を元に、災害支援ナースは避難者のニーズや健康状態を適切に把握し、適切な医療支援を提供することが求められます。災害支援ナースは、これらの情報をもとに効果的な医療対応を行い、被災者の健康と安全を確保する役割を果たします。
看護師の体験事例
これは避けられない状況であり、そのような情報もスタッフ間で共有する必要があるという点を学びました。
避難者の体調把握や処置
災害支援ナースは、避難者の体調を把握し、状況に応じて適切な処置を行います。
避難者は災害によるストレスや持病の悪化によって、状態が変化する人々も多くいます。
そのため、災害支援ナースは避難場内を定期的に巡回し、必要に応じて避難者に声をかけ、状態の変化に注意を払い、適切な観察を行います。
看護師の体験事例
また、避難者の中には腰痛などの持病が悪化している方もいましたので、その対応も行いました。
避難者の健康管理アドバイス
避難所の避難者に対する健康管理やアドバイスについても、災害支援ナースとしての重要な役割です。
避難者の健康状態の観察を通じて、体調の変化や健康リスクの早期発見を促し、必要なケアを提供することが求められます。
また、適切な食事や休息、薬の服用など、避難生活における健康維持のためのアドバイスも行い、避難者が安全で健康的な状態を保つ手助けを行います。
看護師の体験事例
このような状況下で、災害支援ナースとして避難者の健康管理や予防に関するアドバイスが非常に重要な役割でした。
避難者の健康状態を見守りながら、エコノミークラス症候群や熱中症などのリスクを最小限に抑えるための適切な情報提供とケアを行うことが求められました。
避難所の環境整備・感染対策
避難所における環境整備や感染対策も、災害支援ナースの重要な役割です。
災害が発生した直後、避難所においては水道やトイレが不足することがある状況があります。
(実際には、避難所ごとに少しずつ水道の整備や仮設トイレの増設(洋式、和式、男性用)、手洗い場・洗面所の設置などが行われていました。)
こうした状況が長期間続く場合、感染対策の実施が難しくなる可能性や、排泄が困難で新たな問題が発生するリスクがあります。
そのため、災害支援ナースは避難所内での環境整備と並行して、避難者の感染対策を行う役割も担います。
避難所内の清掃や通行路の確保、車椅子などの設営を通じて、避難者の健康と安全を守るための取り組みを行います。
看護師の体験事例
さらに、令和2年7月の人吉での豪雨災害では、初めてのコロナ禍での災害派遣となり、手指衛生だけでなく体温測定や避難者同士の距離確保など、これまで経験のなかった感染対策が必要でした。
その中で、指定された避難所以外で自主避難している方や車中泊をしている方が、トイレや水道を利用するために避難所を訪れる場面もありました。そのため、これらの避難者も含めて感染対策を徹底することが重要でした。
支援スタッフとの連携
前述した通り、避難者は災害によるストレスや持病の悪化によって、状態が変化することがあります。
そのため、避難所内での支援活動は、災害支援ナースだけの活動にとどまらず、役所職員、保健師、リハビリテーションや介護チーム、薬剤師など、多様な支援スタッフとの連携が不可欠です。
避難者の支援を行う際、連携スタッフと共に行動する際は、まず挨拶や自己紹介から始め、どのような支援を行うのか、避難者がどのようなニーズを持っているのか、その他関連情報を共有します。
災害支援ナースは、連携の重要性を理解し、それぞれの専門知識やスキルを結集して、避難者に最適な支援を提供するための連携体制を確立します。
看護師の体験事例
その方は、スタッフから得た情報によれば、姉がいるものの、自宅の片付けのため不在とのことでした。
私はその方に声をかけ、見守りながら地域包括支援センターのスタッフに情報提供の依頼を行い、役場のスタッフに連絡し、適切なサポートを受けられるよう配慮しました。
避難者の精神面のケア
避難者の精神面のケアも、災害支援ナースの重要な役割です。
災害に遭遇することで、住み慣れた地域や自宅だけでなく、仕事まで失うという大きな喪失感を感じてしまいます。
そのため、避難者は元気に見えても、実際には大きなショックを受けていて落ち込んでいることも少なくありません。(子供や高齢者も状況によって異なる反応を示すことがあります。)
災害支援ナースは、避難者の感情や思いを否定せず、耳を傾けて受け止めることが重要です。
また、避難者の行動や言動の変化にも注意を払い、その変化を適切に観察し続けることが求められます。
看護師の体験事例
避難者の精神面のケアとして、注意が必要なことは、避難者が落ち込んでいるからといって、支援者側(災害支援ナース)から自発的にアドバイスを行わないことです。
被災した経験に対して目を向けたくない人もいるため、無理に思い出させることや考えを促すことは避けるべきです。
そのため、避難者の立場や感情に配慮し、無理強いせずに接することが大切です。
夜間の避難者の見守り
災害支援ナースは、避難者が夜間に就寝している際の見守りを行います。
災害後、自宅の片付けや仕事をしてきた後で、避難所で夜を過ごすことになる避難者にとって、安眠は重要です。
そのため、災害支援ナースとして避難者の安全と心のケアに配慮しながら、夜間の見守りを行います。
避難者の緊急時の対応
避難者の緊急時の対応も災害支援ナースの重要な役割です。
災害によるストレスや怪我による状態の変化は少なくありません。
そのような緊急時、災害支援ナースは現状を確認し、必要に応じてかかりつけ医に連絡を取ることや、状況に応じて救急搬送の手配を行います。
看護師の体験事例
例えば、薬の在庫が十分か、怪我をしていないか、適切な休息をとれているか、適切な食事が摂れているか、排泄に問題がないかなど、基本的なケアが災害時でも非常に重要です。
これらの基本的な看護ケアが、被災者の健康と安全を守るための基盤となると考えています。
私が災害支援ナースで活動を行って感じたこと
私が災害支援ナースの活動を行い、感じたことを説明していきます。
これから、災害支援ナースとしての活動を希望される方は、ぜひ参考にしてみてください。
これまでの看護の経験が活かせる
災害支援ナースの研修を受けることや、実際に派遣されて活動する中で気付いたことがあります。
それは、日常の看護業務で当たり前に行っていることが、災害現場でも活かすことができるということです。
災害看護においては特別な対応が求められるケースもありますが、避難者の健康管理や精神的なケアなど、先ほど説明した内容からも分かるように、これまで病院や施設で行ってきた看護の一環であると言えます。
災害支援ナースの役割は、基本的な看護スキルと経験をベースにしており、それを現場に適応させることで、被災者のサポートに貢献することができると感じます。
災害に関する専門的な知識や看護を習得できる
災害支援ナースとして活動する際、これまでの看護の経験を生かすだけでなく、災害に関する専門的な知識や看護スキルも学ぶことができます。
この学びは、単なる書面上のものだけでなく、実技研修に積極的に参加することで実際の応急処置や連携に関するスキルを磨くことができます。
私は病院や施設では経験できない内容や状況に対処する方法を身につけることができたと感じます。
また、研修を受けて災害支援ナースとして活動した経験から、これまで以上に自信を持って実務に取り組むことができました。
精神的負担も大きい
災害が発生すると、家族や知人を失う方や、生活環境が変わる方など、人々の心に大きな影響を与えます。
そのため、多くの被災者が精神的な負担を抱えています。
このような状況下での心の状態は、悲しみを表に出す人もいれば、それが難しい人もいます。さらに怒りや焦燥感を向ける場合もあれば、逆に元気な様子を見せる人も存在します。
被災者の反応は多様で、その背後には個人固有の感情があることを理解しておくことが重要だと私は感じました。
精神的な負担を理解する立場にあるからこそ、支援者側(災害支援ナース)も自身の精神状態に気を配る必要があります。
熊本地震の際には、余震の継続によって精神的なストレスが蓄積され、一般的な業務に戻ることが難しい状態に陥る例もありました。このようなケースでは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような症状が生じることがあります。
災害支援ナースとして被災者の精神的なサポートは非常に重要ですが、悩みを解決するのは難しい場合もあります。
その代わりに、避難者の気持ちを真摯に受け止め、自分ができる範囲で的確な支援を提供することが大切だと私は感じます。
何よりも、「できることをやる」という姿勢を持ち、無理をせずに活動することが、被災者への有意義な支援となります。
様々な医療・福祉スタッフと活動ができる
これまでは、看護師として主に自身が勤務する職場内での医療チームの連携が中心でした。
しかし、災害支援ナースとして実際に派遣されてからは、これまで関わったことのない役所職員や保健師など、多様な医療・福祉スタッフと協力して活動する機会を得ることができました。
さらに、県内だけでなく他県から集まる医療スタッフとの共同作業を通じて、異なる視点や気付きが生まれました。
これにより、私は新たな発見やアプローチ方法に気づくことができました。
同じ目標に向かって活動する仲間たちと連携することで、共通の使命感に心が一つになり、心が熱くなった瞬間を鮮明に覚えています。
経験したことがない対応が求められる
災害支援ナースとして登録する際には、自身が経験した診療科や内容、例えば老年期の病棟や手術室での経験、救急外来での経験、小児・乳児・産婦人科での経験などを登録用紙に記載して提出します。
しかし、実際に災害支援ナースとして派遣された際に、自分が経験したことのない年齢・性別・疾患を持つ人々への対応が求められることも珍しくありません。
こうした場面で何もできなかったという気持ちや不安感を抱え、自分の力不足を感じてしまうことも実際にはあります。
私自身も災害支援ナースとしての経験が浅い時に、何ができたのだろうかと考え込んでしまい、落ち込んでしまうことがありました。
しかし、災害支援ナースとしての活動は個人だけでなく、仲間や他の災害支援ナース、保健師、多様な医療や福祉スタッフと協力して行うものです。
連携を大切にし、共に対応を考えることで、初めての経験や困難な状況でもより効果的に支援ができると私は感じます。
災害拠点病院の看護師求人が多い転職サイト
前述の「新たな災害支援ナースになるには?」で説明したように、応援派遣は看護師が所属する医療機関と都道府県(自治体)で協定の締結が必要です。
そのため、都道府県での協定の締結を行っていない医療機関に勤務している場合、看護師は「協定の締結を行ってもらう」又は「協定の締結がある医療機関へ転職する」必要があります。
一般的に災害拠点病院では、「協定の締結」を行っているケースがほとんどであり、希望条件に合わせて転職すると良いでしょう。
しかし、災害拠点病院は規模が大きな病院がほとんどであり、看護師として1人で転職することは難しい場合が多く、以下でご紹介する看護師転職サイト(看護師専用の転職エージェント)を活用しましょう。
また、看護師転職サイトであれば、災害支援ナースになりたい旨を伝え、「協定の締結」を行っている病院や診療所を探してもらうことも可能です。
全国の災害拠点病院求人がある!レバウェル看護
転職相談 | 面接対策 | 条件交渉 | 退職相談 |
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サイト名 | レバウェル看護(旧:看護のお仕事) |
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運営会社 | レバレジーズメディカルケア株式会社 |
公開求人数 | 140,163件 (2024年12月2日時点) |
非公開求人 | 豊富 |
対応職種 | 正看護師、准看護師、助産師、保健師 |
対応 雇用形態 | 常勤(夜勤有り)、日勤常勤、夜勤専従常勤 |
対応施設 | 総合病院、一般病院、クリニック、特別養護老人ホーム(特養)、訪問看護、有料老人ホーム、デイサービス、重症心身障害者施設、保育園、検診センター |
対応 診療科目 | 内科、精神科、心療内科、小児科、外科、整形外科、皮膚科、産婦人科、眼科、歯科、美容外科、美容皮膚科 |
対応配属先 | 病棟、外来、施設、訪問、手術室(オペ室)、透析、内視鏡 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
特徴 | ・看護師の転職求人が豊富 ・転職支援サービスが手厚い ・転職の相談から行える ・院内・施設内情報に強い |
レバウェル看護(旧 看護のお仕事)は、担当者の質が良く、看護師に人気の看護師転職サイトです。
院内情報も正確に把握している場合が多く、本音のメリット・デメリットを聞くことが可能です。
また、ハローワーク関連の求人もカバーしており、災害拠点病院又は、「協定の締結を行っている病院や診療所」漏れなく探してもらうことが可能です。
災害支援ナースを希望する場合は、必ず活用しておきましょう。
公式サイト:https://kango-oshigoto.jp/
規模の大きな病院に強い!マイナビ看護師
転職相談 | 面接対策 | 条件交渉 | 退職相談 |
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サイト名 | マイナビ看護師 |
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運営会社 | 株式会社マイナビ |
公開求人数 | 82,343件 (2024年12月2日時点) |
非公開求人 | とても豊富(保有求人全体の約40%非公開) |
対応職種 | 正看護師、准看護師、助産師、保健師、ケアマネジャー |
対応 雇用形態 | 正社員、契約社員、パート・アルバイト、業務委託その他 |
対応 勤務形態 | 常勤(二交替制)、常勤(三交替制) 、夜勤なし、夜勤専従 |
対応施設 | 病院、クリニック・診療所、美容クリニック、施設、訪問看護ステーション、看護師資格・経験を活かせる一般企業、治験関連企業(CRA、CRCなど)、保育施設 、その他 |
対応 診療科目 | 美容外科、小児科、産科、婦人科(レディースクリニック)、整形外科、循環器内科、心療内科、消化器外科、心臓血管外科、スポーツ整形外科、脳神経外科、眼科、形成外科、消化器内科、歯科、精神科、血液内科、外科、内科、神経内科 |
対応配属先 | 病棟、外来、手術室、内視鏡室、ICU、透析、救急外来、訪問看護、管理職の仕事 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
特徴 | ・転職の相談から行える ・キャリアアドバイザー親切丁寧 ・退職交渉も可能 ・企業系のレア求人を豊富に保有 |
マイナビ看護師は、大規模は病院に強いため、災害拠点病院又は、「協定の締結を行っている病院や診療所」の看護師求人を探してもらうことが可能です。
また、担当者もプロの転職エージェントのため、利用した看護師の不満はとても少なく満足度が高いです。
非公開求人も多いですが、地域により求人数が少ない傾向もあるため、レバウェル看護(旧 看護のお仕事)と合わせて利用しましょう。
公式サイト:https://kango.mynavi.jp/
まとめ
私が災害支援ナースになったのは、配属された病棟の上司が災害支援ナースの研修を受けているのを知り、災害看護に興味があり参加したことがきっかけです。
「いつか災害があったら自分も役に立つ人間でいたい」という気持ちが強かったことを今でも覚えています。
私の経験から言えることは、災害支援ナースとしての活動が特別なことではなく、日常の看護実践などで培った知識やスキルが、災害時に有効に活かされることだと思います。
しかし、災害支援ナースを経験することで、災害看護のプロフェッショナルを目指すきっかけになることは間違いありません。
私は、災害支援ナースとしての活動を継続しながら、さらに専門性を深めるためにDMATチームやJMATチームに所属し、プロフェッショナルとしての活動も視野に入れています。
また、これはすべての看護師に共通することですが、未来においても災害に遭遇する可能性は十分に考えられます。しかも、経験済みの災害と同じ状況とは限りません。そのため、日常から学びを積み重ね、準備をしておくことが重要です。
私は、未知の災害に備えるために、災害医療・看護・福祉に関する知識を深め、多くの人々の役に立てる看護師として成長していきたいと考えています。
皆様もぜひ、災害支援ナースとしての一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
出典・参照先一覧
- 災害看護(日本看護協会)
- 新たな災害支援ナース始まる 感染症発生時の派遣、養成・登録の仕組みも法制化(日本看護協会)
- 災害支援ナースについて(東京都看護協会)
- 令和5年度 災害支援ナース養成研修のお知らせ(東京都看護協会)
- 新たな災害支援ナース要請研修に関する変更点(要点)(東京都看護協会)
- 災害支援ナース育成・派遣に関する大切なお知らせ(岐阜県看護協会)
- 災害支援ナースについて(厚生労働省)
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代表取締役 | 辻󠄀 昌彦 |
設立 | 2015年6月 |
資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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厚生労働大臣許認可 | 有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-314509 (厚生労働省職業安定局: 職業紹介事業詳細) 特定募集情報等提供事業:51-募-000760 |
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