認知症病棟で働く看護師の仕事内容と体験談
認知療病棟とは、急性で集中的な認知症治療を必要とする認知症患者を対象に精神症状の改善や生活機能の維持、又は回復を目的に療養する病棟です。(「認知症治療病棟」とも言います。)
主に、認知症による症状(妄想、幻覚、徘徊、暴⾔暴⼒など)が強く、⾃宅や施設での⽣活が難しい患者が入院しています。
病院によって異なりますが、認知症病棟には看護職員を始め作業療法士(OT等)、精神保健福祉士(PSW等)の配置が一部定められています。
(参照:認知症治療病棟と老人性認知症疾患療養病棟の概要 厚生労働省)
私の経験をもとに認知症病棟で働く看護師の仕事内容や働いて感じたことを説明していきます。
執筆・監修看護師- 保有資格:看護師
- 施設経験:2次救急病院、総合病院
- 専門分野:救急外来、回復リハビリ、スポーツ整形外科、認知症
私は新卒から看護師として2次救急病院に4年勤務し、総合病院の回復リハビリ病棟に2年とスポーツ整形外科外来に2年勤務した経験があります。現在は、認知症対応の中核病院で勤務し、現在看護師として13年目です。幅広い経験を活かし、看護師の方の役に立つ情報を執筆していきます。
認知症病棟で働く看護師の仕事内容
私が勤務していた病院の認知症病棟は、精神科を軸とする約300床の病院の中で200床が認知症治療病棟でした。
入院している認知症患者は、2ヵ月を目途に薬物療法や作業療法をしながら、⾃宅や施設等へ戻れるように援助を行っていました。
認知症病棟で働く看護師の主な仕事内容は、患者の日常生活の援助や環境整備、服薬管理、精神症状の観察と記録、患者の隔離や身体拘束への対応、医師や他職種とのカンファレンス、退院支援です。
以下では、私の経験から認知症病棟で働く看護師の仕事内容を詳しく説明していきます。
⼊院患者の受入れと検査
認知症病棟で働く看護師は、入院患者の受入れや、入院に伴う検査を行うことも仕事の1つです。
主に認知症病棟に入院してくる患者は外来で通院を続けていた方や高齢者施設に入居されている方が多く、家族や施設のスタッフと共に来院します。
患者の家族は入院することに安堵の思いや、家で介護ができなかったという申し訳なさのような感情を抱いている方もいます。
そのため、認知症病棟で働く看護師は、大変な介護を行ってきた家族の思いに寄り添い、ねぎらうことを忘れないように対応します。
また、患者の入院時には認知症の症状が強く出ている場合が多く、入院前に行われる採血などの検査ができない場合が多いです。看護師は、検査は患者が落ち着いているタイミングで改めて行おうと心掛けます。
看護師の体験事例
付き添いの家族(奥様)は、長く介護してきたことからの解放感、それを感じてしまうことへの罪悪感、入院生活は大丈夫だろうかという不安な気持ちが強くありました。
私は看護師として奥様の思いや背景を聞き、長い期間介護をしてきた奥様をねぎらいました。そして、患者の症状が落ち着いた後に、奥様に食事介助をしていただくことを提案しました。
患者の日々の様子を伝えながら、奥様の思いを聞くことを繰り返し、奥様への援助にもつなげました。
患者の⽇常⽣活の援助
主に認知症病棟に入院する患者は、高齢者が多く身体的な理由や認知症の症状でADL動作に介助を要することが多いです。
認知症病棟で働く看護師は、患者の日常生活の援助も治療の1つとなるため、仕事の内容です。
例えば、「このタイミングでは患者はこんな様子だった」「こんな関わりをしたときは、患者は穏やかな様子だった」など、その患者に合った援助の仕方を看護師として模索します。
さらに、一人ひとりの性格や背景を捉えながら援助の仕方を検討し実行します。残存機能を活かし、その人らしく生活できるよう援助を行い、自宅や施設へ戻ることを目指します。
看護師の体験事例
入院患者の環境整備
認知症病棟で働く看護師は、患者のBPSD(認知症の患者にみられる精神症状・行動症状)を増悪させないような環境整備を行うことも仕事の1つです。
環境整備の具体例としては、認知症の進行により指示動作が理解しにくくなるため、安全面を考慮しながら、個室トイレを使用するか、ポータブルトイレを使用するかなどの設備を検討します。
また、認知症病棟において、看護師から患者へのケアの拒否はよくあることで、拒否には患者なりの理由があります。ケアの拒否の原因を見極めるためには、患者の行動や言動、生活歴や周囲の環境を見直し、看護師としてアセスメントする必要があります。
看護師の体験事例
カンファレンスの結果、普段より寒がりで何枚も上着を着るような患者だったので「浴室が寒いのではないか」との意見があり、脱衣室から浴室まで温度を暖かく設定し、案内したところ拒否なく入浴することができました。
生活援助の際は、患者様の認知症程度や症状を把握した上で、身体介助の方法を工夫する必要があります。また、BPSDを増悪させる環境要因をアセスメントし対応することも重要だと、私は感じました。
患者の服薬管理
患者の服薬管理も、認知症病棟における看護師の仕事です。
他の病棟との違いとして、認知症病棟に入院する患者に服薬に対して疑念を抱かれないように、患者一人ひとりの服薬内容を看護師が把握します。
患者に服薬を確認した際はスムーズに回答できるように努力します。
さらに、食後に薬を服用する習慣があるのか、どんな飲み物で薬を飲んでいたのかなどを事前に情報収集し、患者の生活歴にも配慮します。
このことにより、認知症病棟に入院する患者と看護師の信頼関係が構築され、服薬拒否を避けることができます。
また、確実に服薬できた後の口腔内の観察も看護師として大切です。
患者の精神症状の観察と記録
患者の精神症状の観察と記録をすることは、多職種の治療方針を支える重要な認知症病棟で働く看護師の仕事です。
認知症病棟に患者が入院すると、薬物療法や作業療法、精神療法が開始されます。
そのため、認知症病棟で働く看護師は患者の症状の変化や、症状が強く出ている時に使う頓服薬の効果はどうであったかなどを長期的に観察し、記録に残します。(認知症の症状は、時間帯や日によって程度が変化し内容が変わることがあります。)
患者の症状を細かく観察し記録に残すことで、看護師や多職種と共有したり、家族に病状を説明するときに役立ったり、薬物療法の効果を評価することにもつながります。
また、認知症病棟に入院する患者は循環器疾患や糖尿病など身体的な疾患を併せ持つ方がほとんどです。身体の苦痛を訴えることは難しい患者が多く、看護師は検査データや患者の表情や言動の変化などから早期発見に努めます。
看護師の体験事例
入院後1か月ほど経過した患者が2〜3日前より、16時〜19時ごろまで落ち着かずスタッフが付き添い、エレベーター前でボタンを操作しようとする様子が頻回にありました。
そのため、私は看護師として、その患者の様子を細かく記録に残しました。
数日分の記録をもとに精神科医へ服薬調整を依頼し、内服薬を変更することになりました。変更後、その患者は数日で夕暮れ症候群の頻度と程度が減少し、穏やかに過ごすことができました。
患者の隔離や⾝体拘束への対応
患者の隔離や身体拘束への対応も認知症病棟で働く看護師の仕事内容の1つです。
認知症病棟に入院する患者の中には、精神保健指定医の指示で隔離や身体拘束を行う方もいます。その場合は法律に基づいた時間での巡視や部位の観察を看護師が行います。
短ければ30分ごとの観察が必要となり、病棟の看護師で分担して行います。
拘束を解除する時のタイミングや方法も医師を含めた多職種で話し合いながら進めていきます。
看護師の体験事例
主に、男性スタッフがいる時間を選ぶことや、他の患者が自室へ戻っている時間を選ぶこと、緊急時に対応してもらえるよう担当医が院内にいる時間を選ぶこと、解除中に落ち着いて過ごせるよう好みのレクリエーションを行うことなどが決められていました。
最初は短時間から始め、徐々に時間や回数を増やしていき、患者自身もその環境に慣れるよう看護師として援助していました。
医師や他職種とのカンファレンス
病院によって異なりますが、認知症病棟では医師や看護師の他に、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士、介護福祉士など様々なスタッフが患者と関わりを持ちます。
そのため、認知症病棟で働く看護師は医師や他職種とのカンファレンスが重要な仕事の1つです。
カンファレンスでは、最近の患者の様子を共有した上で、薬物の変更、必要な検査、関わり方などを検討し実践します。
その結果、患者の観察や様子を看護師や他職種が報告し、次のカンファレンスで検討し、継続していきます。
また、看護師としては病棟では分からないリハビリ中の患者の状態や、他職種の視点でのケアの改善点を提供してもらうことで、患者の看護に役立てることができます。
看護師の体験事例
例えば、患者の薬の変更や隔離、身体拘束についても医師の一存で決めることはなく、患者を日々見ている看護師の意見を取り入れながら検討していました。
内科や外科病棟などではあまり見られない、認知症病棟ならではのことだと思います。
退院⽀援
認知症は今の医学では治せない病気です。
一時的に患者の症状がよくなり退院した場合でも、自宅で症状が進行し再入院するケースは珍しいことではありません。
また、患者は⾃宅や元の施設に戻ることができるとは限りません。
そのため、認知症病棟に勤務する看護師は、次の居場所を検討し、退院支援を行うことも仕事です。
医師、看護師、精神保健福祉⼠、介護⽀援専⾨員、院内の退院⽀援員などと本⼈、家族を含めてその⼈らしく⽣活できる場所を探します。
看護師の体験事例
私は、定期的に患者の変化を共有することで、その家族と信頼関係ができてから、今後の方針を家族と本人に確認し退院や継続施設などを検討していました。
認知症病棟で看護師として働いて感じたこと
私が認知症病棟で看護師として働いて感じたことを説明していきます。
患者から暴⾔暴⼒を受ける可能性がある
認知症病棟に入院している認知症患者は、⾔葉や感情がうまく表現できず、暴⾔暴⼒が現れる時もあります。
そのようなことにならないために、各病院や病棟では対策を行っていますが、急に症状が患者に現れることがあり、看護師として回避できないこともありました。
私も患者から叩かれたことがありました。
その時には「⾃分の対応が悪かったのだろうか…」と落ち込みましたし、患者に恐怖感もいだきました。
⼀緒に働く医師や看護師に話を聞いてもらい、苦⼿な患者のケアを⼀時的に外してもらうことなどで助けてもらった経験があります。
看護師だからといって患者の全てを受入れ我慢しなければいけないわけではありません。また、精神科がある病院では、院内にスタッフへ向けたメンタルケアがある場合も多いです。
コミュニケーション能⼒が向上する
認知症病棟では、患者の変化をコミュニケーションの中で観察することも必要な技術です。
私は、聞くことを重視すると相手の細かな表情や言動を観察するようになり、深く患者の心理状態を観察できることに繋がったと感じます。
沈黙も以前は苦手でしたが、沈黙している間に患者の目や口元の動き、その後の反応を観察することや、重要な発言に注目するようになりました。結果、以前よりコミュニケーション能力が向上しました。
また、私の経験からですが、認知症患者は⾔葉や感情が思うようにコントロールできない状態ではありますが、こちらの様子をよく見ています。
誠意を持って話を聞くことや、話を受け止めること、目を見て話すことなどコミュニケーションの基本は同じです。患者は⾼齢のため、⽿元で⼤きめの声で話す、短く分かりやすい⾔葉を使うなどの⼯夫をしながら、患者の背景や性格に合わせた⾔葉選びをしていくことで援助がスムーズに進みます。
患者の家族から感謝される
認知症病棟に入院する患者の家族の中には、認知症のBPSDがひどく、疲弊している方も多いです。
入院後に患者の経過を適時報告し、変化を目の当たりにすると退院時に大変、感謝されることがあります。
入院当初は不安に感じていることも多いですが、看護師として信頼関係を構築できたときや、家族から感謝されたときに私はやりがいに感じました。
患者とじっくり関われる
認知症病棟では、急性期など一般病棟とは違い、数日や1ヵ月以内に退院するケースは少なく、認知症の症状が悪化したことによる再入院もよくあります。
さらに、内科や外科病棟とは違い分刻みのスケジュールはありませんし、看護師のスケジュールに患者は合わせてはくれません。
患者に付き添って散歩をしたり、レクリエーションをしたりする時間の中で、看護師は患者の様⼦を観察します。
そのため、認知症病棟では看護師として患者とじっくり関わることができると思います。
認知症認定看護師を⽬指すことができる
「日本看護協会の認知症看護認定看護師」や、「日本精神科医学会の認知症認定看護師」を、認知症病棟で働く看護師は目指すことができます。(看護経験や認知症分野の経験が必要な認定資格です。)
私が勤務していた認知症病棟でも4年の間に2⼈の看護師が認知症認定看護師を取得しました。
認知症関連の看護師が取得できる認定資格は、認知症患者への知識や関わり⽅はとても参考になりますし、超⾼齢化社会の今、とても役立つ資格だと感じます。
認知症病棟の看護師求人が多い転職サイト
看護師の転職先である施設は、一般的に病棟や外来等で大きく区分されているため、病院の「認知症病棟」へ転職を考えた場合、希望の部署に配属されるように面接時に交渉する必要があります。面接時に交渉は行ったことがない、どうやって交渉して良いか分からない看護師の方が大半だと思います。
だからこそ、交渉の代行を行ってくれる看護師転職サイト(看護師専用の転職エージェント)の活用をおすすめします。
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非公開求人 | 豊富 |
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対応 雇用形態 | 常勤(夜勤有り)、日勤常勤、夜勤専従常勤、夜勤専従パート、非常勤、派遣、紹介予定派遣 |
対応施設 | 総合病院、一般病院、クリニック、特別養護老人ホーム(特養)、訪問看護、有料老人ホーム、デイサービス、重症心身障害者施設、保育園、検診センター |
対応 診療科目 | 内科、精神科、心療内科、小児科、外科、整形外科、皮膚科、産婦人科、眼科、歯科、美容外科、美容皮膚科 |
対応配属先 | 病棟、外来、施設、訪問、手術室(オペ室)、透析、内視鏡 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
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サイト名 | マイナビ看護師 |
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公開求人数 | 81,585件 (2024年10月1日時点) |
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対応職種 | 正看護師、准看護師、助産師、保健師、ケアマネジャー |
対応 雇用形態 | 正社員、契約社員、パート・アルバイト、業務委託その他 |
対応 勤務形態 | 常勤(二交替制)、常勤(三交替制) 、夜勤なし、夜勤専従 |
対応施設 | 病院、クリニック・診療所、美容クリニック、施設、訪問看護ステーション、看護師資格・経験を活かせる一般企業、治験関連企業(CRA、CRCなど)、保育施設 、その他 |
対応 診療科目 | 美容外科、小児科、産科、婦人科(レディースクリニック)、整形外科、循環器内科、心療内科、消化器外科、心臓血管外科、スポーツ整形外科、脳神経外科、眼科、形成外科、消化器内科、歯科、精神科、血液内科、外科、内科、神経内科 |
対応配属先 | 病棟、外来、手術室、内視鏡室、ICU、透析、救急外来、訪問看護、管理職の仕事 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
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まとめ
認知症病棟で働く看護師は、患者の認知症によりADL動作が障害されるため、一般病棟よりも介助の仕事が多い傾向にあります。
さらに、汚物処理や患者から暴言、暴力のリスクもあるかもしれません。
しかし、私は看護師として患者とじっくり関わることができることや、患者の家族から感謝されることで、看護師としてのやりがいを感じます。
超高齢化社会の今、どこの病棟にも高齢者がおり、認知症を患う方を看護師として診ることは珍しくありません。
そのため、是非この記事を確認いただき、認知症病棟に看護師としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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運営会社 | 株式会社peko |
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会社ホームページ | https://peko.co.jp/ |
所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂3丁目1-16 BIビル6F |
代表取締役 | 辻󠄀 昌彦 |
設立 | 2015年6月 |
資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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厚生労働大臣許認可 | 有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-314509 (厚生労働省職業安定局: 職業紹介事業詳細) 特定募集情報等提供事業:51-募-000760 |
連絡先 | 03-5324-3939 (受付時間:休日、祝日を除く10:00~17:00) |
お問い合わせ | https://peko.co.jp/inquiry |
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