新人看護師1年目だけど辞める決意をし退職した私の体験談
新人看護師が転職先を探す。このことについて、みなさんはどう思われるでしょうか?
「どんな職場でも3年はいなきゃ、看護師としてやっていけない。」
「新人はどこだって辛いもの。それなのに辞めたいと思うなんて、ただの甘えだし、いかにも今どきの子って感じがする。」
そういう意見が多いように思います。
私自身、新人時代は「どんなに辛くても、辞めてはいけない」と考え、必死に食らいつこうとしました。
しかし、あれから10年以上たった今、こう思うのです。
「新人看護師で転職して、本当に良かった」と・・・。
今回は、私が新人看護師1年目でなぜ転職に至ったのか、その体験をお話ししたいと思います。
執筆・監修看護師- エリア:東京都在住
- 保有資格:看護師、尿病療養指導士
- 経歴:大学病院、総合病院、デイサービス、ツアーナース、イベントナース、特別養護老人ホーム、訪問入浴、外来、健診センター、有料老人ホーム
- 診療科経験:脳神経科、循環器科、内分泌科、一般内科、血液内科、腎臓内科、老年精神科(療養型)
看護師だった祖母の影響で、気が付いたら看護師を志していました。看護短大にて看護師資格を取得後、大学病院に1年、2か所の総合病院に7年勤務し、看護師として経験を積んだ他、派遣看護師としてツアーナース、介護施設、訪問入浴、イベントナースなど、様々な仕事を経験しています。看護師の仕事は大好きですが、今は家庭の事情にて、現場での仕事ではなく、看護師ライターとして活動しています。
全国的にも有名な系列病院に入職
新卒で入職した病院は、全国的にも有名な系列病院でした。
入職式後の配属発表にて、第一希望だった専門領域へ配属された知った時はとても嬉しかったですし、これから始まる看護師としての人生に、期待で胸を膨らませていました。
しかし、同じく新卒で配属された3人と一緒に配属先へ挨拶に行った時、初対面の師長から、こういわれました。
「みなさん、卒論のテーマは何だったの?参考までに教えて。」
私以外の3人は大学卒だったので、卒論のテーマを次々に発表していきます。
一方、私は短大卒なので卒論は書いていませんでした。
自分の順番になった時、正直に、
「私は短大卒なので、卒論は書いていません」
と話しました。
すると師長は、
「え、そうなの?短大卒なのに、ここへ就職したわけ?」
と言ってきました。
そしてその日から、同期の中で私だけ扱いが変わっていきました。
教育を受けるが一人だけ、どんどん遅れていく
配属後、それぞれプリセプターの先輩がついて、マンツーマンでの指導が始まりました。
しかし、私のプリセプターさんは4月、5月ともにほぼ夜勤しかない勤務体制となっており、一緒の勤務となることはまずありません。
他の同期はみんなほぼ毎日変わらず。プリセプターから直接指導を受けているにも関わらず、です。
日替わりで変わる指導者からは、毎日「なんでこれができてないの?」
「あなたはこれまで何を学んできたのかわからないから、何を指導していいかわからない!」
など、否定的な言葉を言われ続けました。
- 勉強をしても「勉強法が違う!」
- 患者さんへ声掛けしたら「情報も十分にとれていないのに、話しかけるな!」
- トイレへ誘導したら「転倒したら私の責任になる。私の患者さんに触らないで!」
プリセプターからは「どんどん自分から先輩に話しかけて、行動しなきゃだめだよ」と指導を受けましたが、話しかけても無視されるか、あるいは「忙しいのに空気を読んで」と一蹴されてしまうことがほとんどでした。
そのため、どう声をかけていいかわからず、私はどんどん消極的になっていきました。
他の同期も私のことを気にかけてくれてはいましたが、仕事中はプリセプターにつき忙しくしていたので、お互い声を掛け合うこともできませんでした。
その様子を見て、周囲の先輩はさらに私を「できない新人。やっぱり短大卒は使えない」と評価するようになりました。
「看護師として働きたい・・・。」
でもやることなすこと、全て先輩に否定されてしまう。
春が過ぎ、他の同期はみんな夜勤に入り始めたころ、一人だけ夜勤にも入れてもらえず、担当も付けてもらえず、どうしていいか悩む日々が続きました。
私に追い打ちをかけた師長の面談
先輩の視線に耐えられず、夏を過ぎたころには、私は病棟の休憩室を使うことができなくなり、休憩時間は職員共有の食堂や図書室で過ごすようになりました。
「なんでこんな風になっちゃったんだろう。」
そう思いましたが、最終的には「私がいけないんだ。私が不釣り合いの病院へ就職したからだ」と思うようになりました。
そしてこのころから始まったのが、師長の「面談」です。
「山村さん(私)、ちょっといいかしら」と病棟のカンファレンス室に呼び出され、そこから数時間にわたり、私の全てを否定する言葉を次々に浴びせられました。
「先輩たちはみな、あなたの指導法について悩んでいる。」
「あなたのせいで、本来病棟全体でやるべき仕事が遅れている。」
「今日だって本当は私も勤務表を作りたいのに、あなたと面談する必要があるので作成が遅れている。この責任をどうとってくれる。」
私には反論の余地は一切ありません。
ただ一方的に師長から「指導」を受けるこの面談は、師長と勤務が重なるとほぼ必ずありました。
少しでも口を開こうものなら「新人のくせに、なぜ師長の私に対して発言をしようなんて思うの。だからあなたはいつまでたってもダメなのよ」とさらに厳しく叱責されました。
後から知ったのですがこの師長、毎年誰か一人をターゲットにして辞めるまで精神的に追い詰める行為を繰り返していたそうです。
なので先輩たちにとってみれば、「今年の”いけにえ”をあいつにしておけば、自分たちは安泰」という思いがあったのだと思います。
そんなことを知る由もなく、毎回数時間にわたって続く師長の面談に、心身ともに疲労を重ねていきました。
もう耐えられない
秋が過ぎ、冬に近づくと、病棟全体における私の待遇はさらにひどくなりました。
「あの子は看護師として使えない。だから、看護助手としての仕事しか与えられない」として、私は連日入浴介助と食事介助、そしておむつ交換の3つしか行ってはいけないと通告を受けました。
他の同期がどんどん業務を独り立ちしていく中、一人看護助手さんに交じって患者さんの介助に徹する日々。
そして冬のボーナスが支給される日に、先輩の一人が私にこう言ったのです。
「なんであなた、看護師としてボーナスをもらっているの?」
「助手のような仕事しかしていないのに。私は毎日必死で働いてこのボーナスをもらっているのに、あなたと同程度のボーナスしかもらえないなんて、不平等だと思わない?」
この一言を聞いた時、私の中で何かが壊れました。
「私は、この場所にいてはいけない。早くこの場所を離れないと、私は看護師としても、そして人間としてもダメになる。」そう思いました。
そして次の師長との面談の時、初めて自分からこういいました。
「部署異動させてください。私にもう一度、看護師として学ぶチャンスをください!」
しかし師長は冷徹にこう言い放ちました。
「あなたを部署異動させたら、異動先に申し訳ない。」
「部長にもあなたについて報告は全てしているけれど、異動は認められないとの意見で一致している。この病棟を離れたければ、辞めるしかないけど?」
おそらく、師長としては「どうせこいつはまだ新人だから、辞めるなんて言い出さないだろう」と思っていたのだと思います。
しかしここで私は始めて、自分からこう師長へ告げました。
「分かりました。では、3月いっぱいで辞める方向でお願いします」
看護師になって、初めて味方になってくれる人に出会えた
師長へ辞めると宣言してすぐ、私は看護師転職サイトへ登録しました。
正直「新人看護師で転職なんて、良いイメージをもたれないに決まっている」と思いました。
しかし、自分を守るため、そして社会人として生活していくためには、もう転職しか道はありません。
登録した転職サイトからの電話でいろいろと自分の状況を話すと、担当者は私にこう言ってくれました。
「大丈夫です。山村さん(私)を受け入れてくれる病院は必ずあります!僕と一緒に、頑張りましょう!」
看護師として働き始めてから今まで、目上の人たちから言われた言葉はほぼすべて、自分を否定する言葉でした。
だからこそ、「一緒に頑張りましょう」と声をかけてくださったその担当者さんの一言が本当に嬉しくて、電話を切ってから思わず泣いてしまいました。
そしてその日以降、こう思うようになりました。
「あの病棟から、もうすぐ離れることができる。だからそれまで、頑張ろう。今の頑張りはきっと、将来自分の糧になるはずだ。」
そして、カレンダーに3月31日を「0(ゼロ)」として、今日まで数字を書き込みました。
一日過ぎたら、カレンダーの数字に「×(バツ)」をつける。
そうすることで、「あと〇日であの病棟から離れることができるんだ」そう自分を励ますようになりました。
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看護部長からの思わぬ謝罪
看護師転職サイトを使って転職活動を進めながらも、勤務表通りに出勤はしていました。
師長へ辞めると報告してからは、先輩たちからも、
「この恩知らず!」
「来年度からどう育てていくか、みんなで話し合おうと思っていたのに。」
「ここでダメなら、あなたはどこにいってもダメだよ。」
と言われましたが、終わりが見えた今、もう傷つくこともありませんでした。
するとある日、師長から「辞めるには部長の許可が必要だから、今すぐ部長へ挨拶に行きなさい」と言われました。
以前、師長から受けた説明では「部長は異動を認めていない。だから辞めるしかない」と言われていました。
そのため、「すんなり辞めさせてもらえるだろう」と考えていました。
しかし面接で部長が言った第一声は、私の想像していたものと全く違いました。
「あなた、なんで病院を辞めるなんて言ったの?異動するという選択はなかったのかしら?」
私は驚き、師長から受けた説明をそのまま伝えました。
すると今度は部長が驚いてしまいました。
実は師長、部長へ私のことを「一切報告していなかった」んです。
部長はその日になって突然師長より「退職希望の新人がいる」と報告したので、「なぜ新人が?」と思い、急きょ面談をしたいと師長へ伝えたそうです。
部長へこれまでの経過を離すと、「そんな新人さんがいたなんて、全く知りませんでした。あなたにはとても辛い思いをさせてしまって申し訳ない。」
「あなたが辞めたいと思うのは当然です。今まで気づいてあげることができず、本当にごめんなさい。」
と、まさかの謝罪を受けました。
その日のうちに師長は部長から呼び出され、厳重注意を受けたそうです。
そしてその日以降、師長の「面談」はなくなりました。
面接時に言われた、転職先の看護部長から受けた一言
看護師転職サイトから紹介された病院は、私の希望であった「新人としての再教育」も受け入れてくれました。
その上、転職先の看護部長からは、
「そんなにつらいことがあったのだから、少し休みたいという希望はあると思う。でも、あなたはまだ看護師としての経験が浅いのだから、ここで休むとより同じ時期に看護師となった人と差が開いてしまう。」
「それはあなたの今後の人生の上で決して良いとは思えないので、退職後4月からすぐにうちの病院で一緒に頑張りましょう!」と言ってくださいました。
新卒で転職という私を、暖かく迎い入れてくださることがわかり、私は安心感からかその場で泣きだしてしまいました。
部長からは「転職後も何かあったら、すぐ私へ相談してきて。大丈夫。あなたはもう一人じゃないからね」と声をかけていただき、その暖かい一言に、一年間ずっと頑張ってきてよかった、そう強く思いました。
正式に転職が決まり、前の職場における最終出勤日。
先輩方へ挨拶を済ませ、病棟を後にしようとしたとき、師長から呼び止められました。
「元気でね。次の職場で、頑張って」
そう笑顔で言い、私を見送ってくださいました。
なぜ笑顔で見送ったのか。
しばらくずっと考えていましたが、あれから月日が経った今ならなんとなくわかります。
師長の中にも少なからず「申し訳なかった」という思いがあり、その気持ちからきた行動だったのではないかと。
最後に伝えたいこと
後から知ったのですが、私が新卒で就職した病院は、全国から多くの学生が就職を希望するため、上層部より事前にこのような指導が出たそうです。
「新卒看護師はたくさんいるので、使えないと思った看護師は容赦なく切り捨てて構わない。欲しいと思った人材のみ育成すればよい。」
もう10数年も前の話であり、今は決してそんなことはないと思いますが、入職にあたって事前にこの情報を知っていれば、もっと違う看護師人生だったのかなと思います。
新人で転職するということは、決して良いイメージをもたれないことは事実です。
「先輩たちと仲良くないから」「ただなんとなく、今の職場よりもいい職場があると思うから」ではなく、転職をせざるをえなかった明確な理由があるならば、私は新人看護師であっても転職という選択をしても良いと思います。
なぜなら、あれから10数年たった今でも、新人看護師として転職して本当によかったと思っているからです。
皆さんはパワハラやセクハラに会っていませんか?毎日罵声を受け、泣いていませんか?狭い世界にいると怒られることが当たり前になり、自分で考える力を失ってしまうことがあります。
皆さんの看護師人生は始まったばかりです。最初の山が少し高いだけで、一歩踏み出すことで、また新しい世界が広がるはずです。
私のように我慢している場合や理不尽な扱いを受けている場合などは、自分の感情がコントロールできなくなる前に、看護師という職を辞めてしまう前に、転職の決断を行ってください。
最後までありがとうございました。
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運営会社 | 株式会社peko |
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所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂3丁目1-16 BIビル6F |
代表取締役 | 辻󠄀 昌彦 |
設立 | 2015年6月 |
資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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厚生労働大臣許認可 | 有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-314509 (厚生労働省職業安定局: 職業紹介事業詳細) 特定募集情報等提供事業:51-募-000760 |
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