児童精神科で働く看護師の仕事内容と体験談
児童精神科と聞くと「児童」と「精神科」という文言から、子どもの精神科というイメージを持たれると思います。児童精神科では、子どもや思春期の若者の精神的な健康と精神障害に関連する問題を診断・治療する診療科です。
以下では私の経験をもとに、児童精神科病棟で働く看護師の仕事内容や、私が看護師として働いて感じたことを説明していきます。
執筆・監修看護師- エリア:愛知県在住
- 保有資格:看護師
- 施設経験:県立病院、看護大学、デイサービス
- 専門分野:ICU、内科、整形外科、外科、精神科、透析、産婦人科
学院を卒業後、看護師としてICU、内科、整形外科、外科を経て精神科病棟で働いていました。その後は看護系大学での学生の実習指導を経験し、様々な病院でそれぞれの施設での看護の特徴を知りました。またアルバイトで、産婦人科クリニック、外来透析、高齢者デイサービスで働いていました。
児童精神科病棟で働く看護師の仕事内容
私が勤務していた児童精神科病棟では、およそ15歳までの子どもが入院していました。
主に、子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、うつ病、不安障害、統合失調症など多岐に渡る精神疾患を支援対象としており、医師や看護師の他にも理学療法士や栄養士、ケースワーカー、看護助手など数多くの職種が介入する多職種連携が必須の職場環境でした。
また、大人の精神科と同じく医療職員が出入口を解錠する必要があり、入院環境は閉鎖病棟となっていました。
私が経験した児童精神科病棟で働く看護師の特徴的な仕事内容を患者に焦点を当て、以下の3つの段階に分けて説明していきます。
- 第1段階:患者の入院療養環境調整
- 第2段階:患者の外泊・外出などの調整・支援
- 第3段階:患者の復学・登校支援
※一般病棟と同様にバイタルサインの測定や排泄の確認、精神科病棟特有のコミュニケーションや自傷他害リスクの対応など、日常的に実施する仕事はどの段階でも行われます。
精神科病棟の看護師の仕事内容に関しては、「精神科看護師の役割と仕事内容、働いた体験談」も合わせて確認してください。
患者の入院療養環境調整
児童精神科病棟では、治療の場として患者(子ども)の入院療養環境調整も大切な仕事の1つです。
入院療養環境調整業務は、入院時の両親からのアナムネ聴取や必要物品の調達、食事座席のセッティングや入浴の順番など成育歴や症状に応じて、看護師が調整を行います。
具体的には、以下のようなことを児童精神科病棟の看護師が行います。
- こだわりが強い子どもであれば、お気に入りのおもちゃの持参
- 人目を極度に気にする児であれば、パーテーションで仕切られた空間で喫食できる配慮
また、同時並行で医師との連携や薬剤調整を行い、児童精神科病棟で働く看護師は、患者(子ども)の内服介助・管理を行います。
看護師の体験事例1:患者の状態
また、一方で表在化する行動面では、不登校やリストカット、自殺企図、暴力行為や性的な逸脱行為など問題となる行動が数多く存在していました。
そのため、患者(子ども)一人ひとりにその症状の現れ方や原因が異なり、把握することが大変でした。
さらに、成育歴などを確認すると、潜在的に育児環境に問題を抱えているケースも数多くありました。
看護師の体験事例2:入院療養環境調整
このため、私が勤務していた児童精神科病棟では、事前に患者(子ども)のこだわりの把握や、入院後のスケジュールの提示などを行い、ある程度日々の流れを固定化する作業が必要でした。
また、内服介助は確実な内服確認と同時に、内服できる薬の形状の幅も広げていく必要がありました。
(将来現投与量でコントロールできなくなった際のスイッチングができるよう見据えての介入を行うためです。)
患者の外泊・外出などの調整・支援
患者の外泊・外出などの調整・支援業務も、児童精神科病棟で働く看護師の大切な仕事です。
前述した、入院療養環境調整後に、患者(子ども)が環境に慣れ、症状がある程度軽快してきた段階で、外泊・外出などの調整・支援が実施されます。
児童精神科病棟で働く看護師は、患者(子ども)が入院して初めての外出や、両親との対面を実現する際に重要なサポート役を担い、はじめは短時間の外出から行い、その後時間を増やして外泊へ繋げます。
また、外出や両親との対面での良かった点や悪かった点の振り返りや整理・改善、両親から自宅での生活の様子についても情報収集も看護師が行います。
看護師の体験事例
また、患者(子ども)が外部の世界に少しずつ適応していけるように支援することに重きを置いていました。
そのため、児童精神科病棟で働く看護師には、患者(子ども)に対して綿密な計画とサポートを提供することが求められました。
患者の復学・登校支援
児童精神科病棟には、基本的に義務教育課程にある患者(子ども)たちが入院しています。
そのため、児童精神科病棟で働く看護師は、患者(子ども)の学校への復学支援を行う必要があり、復学計画の策定と実行を中心に行います。
具体的には、以下のような復学・登校支援を看護師が行います。
- 患者の学校への試験的な登校の実施
- 患者の登校に関する経過観察
- 学校関係者と連絡や確認
- カンファレンスの定期的な実施
上手く患者(子ども)が軌道に乗ることで、そのまま退院となるケースもありますが、問題が応じた場合は帰院となります。
以上のような復学支援は、おおよそ中学2年生までの患者(子ども)に対して行われますが、中学3年生以上の場合は、これらに付随して進路を考え、支援する必要があります。
したがって、高校進学・受験支援調整なども両親と足踏みを揃えながら、児童精神科病棟の看護師が介入を行います。
患者(子ども)の学力や思い、将来像などを看護師が聴取しながら進学のプラニングを行います。
看護師の体験事例
患者(子ども)の帰院後は再度入院継続の環境を整え、看護師と共に日々の振り返りや人間関係の構築の仕方を支援し学べるよう配慮を行っていました。
児童精神科病棟で看護師として働いて感じたこと
私が児童精神科病棟で看護師として働いた経験をもとに、働いて感じた看護師のメリット・デメリットについて説明していきます。
児童精神科病棟に転職を考える看護師の方は、是非参考にしてください。
精神的に余裕をもって働くことが可能
私が勤務していた児童精神科病棟では、入院している患者(子ども)は、生命の危機といった緊急を要する場面が少なく、夜間は落ち着いていることが多い印象でした。
入院している患者は全員子どもであるため、消灯後は静かに寝静まっています。この静かな時間を利用して、受け持ち患者の資料作りや委員会での仕事時間に充てることができます。
しかし、緊急性のある状況としては、患者(子ども)の薬物の過量内服(オーバードーズ)や自殺企図から生じるリストカットなどがありますが、幸いにもそれらの状況は頻繁には発生しませんでした。
そのため、急性期病棟とは違い、看護師として精神的に余裕をもって働くことが可能でした。
また、私の経験からですが、看護業務に余裕があることで、周囲の看護師の人間関係も良好であり、看護師としても長く働きやすい環境でした。
看護師としての医療行為は少ない
私は児童精神科病棟に看護師として転職する前は、急性期病棟の看護師として働いていました。
そのため、児童精神科病棟の看護師として私が感じたことは患者に対しての医療行為が本当に少ないことでした。
児童精神科病棟での看護業務は、主に薬物の塗布、絆創膏や湿布薬の貼付、内服介助、バイタルサイン測定などに集中しています。急性期病棟で習得した看護技術の使用機会が限られるため、看護師として積極的に働きたいと思うと、治療の経験の場としては不十分であると感じました。
そのため、私は医療行為が少ない分、児童精神科病棟で新たな学びやスキルの習得に取り組むことを決意し、心理的なケアや患者との信頼関係の構築に焦点を当てて業務に取り組んでいました。
療育活動における看護師の負担が大きい
児童精神科病棟で働く看護師は、思った以上に患者(子ども)の療育活動における負担が大きかったです。
療育活動は、学校での学習と社会的な経験を補完し、患者の成長と回復を支える重要な要素です。具体的には、演劇や夏祭り、修学旅行、プールなどの行事の企画、運営、実施が含まれます。
これらの行事を円滑に実施するためには、事前の下準備と打ち合わせが何度も行われます。
入院している患者(子ども)の特性を理解し、担当の割り振りや必要な物品の調達なども、実施の数か月前から調整を行います。
その結果、看護師の行事の準備に係る残業がやや多くなる傾向がありました。
こういった療育的側面は、一般病棟と比較して児童精神科病棟は、大きくかけ離れた特徴でもあると感じます。
子ども全般に関する看護知識が習得できる
私は児童精神科病棟で看護師として働き、子どもに関する幅広い知識を修得できたと感じます。
例えば、病棟に入院している子どもたちから、今流行っている遊びや興味深い情報を教わることがあります。この交流を通じて、患者(子ども)との関係性を築き、治療につなげることも看護師の仕事内容の一部です。
しかし、知識の収集は患者(子ども)だけに留まりません。
入院している患者(子ども)たちの両親からも、子育てや育児に関する役立つ情報や工夫について学ぶことが多いです。
このような情報は、私たち看護師自身の子育てや育児において活用できるものであり、非常に価値のあるものだと私は感じました。
私自身は、児童精神科病棟での経験を通じて、子どもに対する多角的な視点を獲得できたことが、看護師として働いた一番のメリットだと感じています。
児童精神科の看護師求人が多い転職サイト
私は、児童精神科の世界に飛び込む前に、ICUを含む急性期病棟で内科、整形外科、外科といった病棟経験を経たのち転職をしました。
看護師が病院への転職を検討する際、通常病棟、オペ室、外来などに区分されており、児童精神科病棟への限定的な求人は非常に少ない傾向があります。
そのため、看護師が児童精神科病棟への配置を希望する場合、面接の際に交渉が必要です。交渉を行った経験がないか、どのように交渉すればいいのかわからない看護師の方が多いでしょう。
そこで、看護師転職サイト(看護師専用の転職エージェント)の利用をおすすめします。
看護師転職サイトは、あらかじめ希望条件に合致する(児童精神科病棟への配置を含む)病院の求人を見つけ、面接などを通じた交渉を代行してくれるので、スムーズに希望の診療科への転職プロセスを進めることができます。
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対応 診療科目 | 内科、精神科、心療内科、小児科、外科、整形外科、皮膚科、産婦人科、眼科、歯科、美容外科、美容皮膚科 |
対応配属先 | 病棟、外来、施設、訪問、手術室(オペ室)、透析、内視鏡 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
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対応 雇用形態 | 正社員、契約社員、パート・アルバイト、業務委託その他 |
対応 勤務形態 | 常勤(二交替制)、常勤(三交替制) 、夜勤なし、夜勤専従 |
対応施設 | 病院、クリニック・診療所、美容クリニック、施設、訪問看護ステーション、看護師資格・経験を活かせる一般企業、治験関連企業(CRA、CRCなど)、保育施設 、その他 |
対応 診療科目 | 美容外科、小児科、産科、婦人科(レディースクリニック)、整形外科、循環器内科、心療内科、消化器外科、心臓血管外科、スポーツ整形外科、脳神経外科、眼科、形成外科、消化器内科、歯科、精神科、血液内科、外科、内科、神経内科 |
対応配属先 | 病棟、外来、手術室、内視鏡室、ICU、透析、救急外来、訪問看護、管理職の仕事 |
対応エリア | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
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公式サイト:https://kango.mynavi.jp/
まとめ
児童精神科病棟で働く看護師の仕事内容や、私が働いて感じたメリット・デメリットについて説明してきました。
児童精神科病棟に入院する患者(子ども)は、目に見えない多くの精神疾患を抱えています。
そのため、治療も一進一退で思い通りに進まないことがあります。
しかし、入院している子どもが元気に退院していくその様子は、未来を創っていく尊い仕事であると、看護師として強く自覚することができます。
一風変わった職場ですが、児童精神科病棟で働く看護師には、こちらでお伝えしきれない沢山の魅力があると私は感じます。
是非、興味がある看護師の方は、児童精神科病棟で働く看護師としてチャレンジしてみてください。
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会社ホームページ | https://peko.co.jp/ |
所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂3丁目1-16 BIビル6F |
代表取締役 | 辻󠄀 昌彦 |
設立 | 2015年6月 |
資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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厚生労働大臣許認可 | 有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-314509 (厚生労働省職業安定局: 職業紹介事業詳細) 特定募集情報等提供事業:51-募-000760 |
連絡先 | 03-5324-3939 (受付時間:休日、祝日を除く10:00~17:00) |
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