頭頸部外科で働く看護師の仕事内容と体験談
頭頸部外科(とうけいぶげか)と聞いてよくわからない看護師も多いのではないでしょうか。
私も頭頸部外科に配属されるまでは「どのような診療科で何をするのだろう?」と思っていました。頭頸部外科に配属されて分かったことは、首から上の部分を診るため耳鼻咽喉科に近いのですが、「耳を診ない耳鼻咽喉科」という印象でした。
現に私が勤務した病院の頭頸部外科に勤務している医師は「耳はあまり分からないから診ることができない」と言う方が多かったことも特徴的でした。
「頭頸部(とうけいぶ)」とは、脳と目を除く首から上のすべての領域を指します。(以下の)図のように、鼻、口(舌も含む)、のど(咽頭、喉頭)、気管、食道上部も含まれています。
私は頭頸部外科病棟に看護師として3年間勤務した経験があります。
頭頸部外科病棟で私が看護師として働いた経験をもとに、仕事内容や働いて感じたことを説明していきます。
執筆・監修看護師- エリア:大阪府在住
- 保有資格:看護師
- 施設経験:総合病院、治験(CRO・CRC)、訪問看護
- 専門分野:脳外科、消化器外科、頭頸部外科、内科、小児科、NICU、小児神経内科、整形外科、麻酔科、ペイン外来、産科
若い頃はいろいろな経験がしたいと転職し、現在は子育てをしながら施設中心の訪問看護をしています。経歴で一番長いのは小児科、新生児看護師です。治験コーディネーターも経験し、妊娠中にはサロンの接客など看護以外の仕事も経験しました。
頭頸部外科病棟で働く看護師の仕事内容
頭頸部外科は、頭部(脳や頭蓋骨)および頸部(首や喉)の疾患や障害の診断と治療を専門とする診療科です。
頭頸部外科では、主に以下の3種類の治療を患者へ行います。
- 頭頸部のがんに対して手術
- 化学療法(動注を含む)
- 放射線治療
そのため、頭頸部外科病棟で働く看護師は治療に関する援助がたくさんありますが、手術後以外の患者は動ける方が多く、日常生活援助は少ない印象です。
私が勤務した頭頸部外科病棟で働く看護師の仕事内容の詳細を説明していきます。
手術前の患者への援助と管理
患者の手術に向けての準備は、頭頸部外科病棟の看護師が行う仕事です。
上顎洞や上顎骨、下顎骨などのがんでは、患者はその部分を切除することになり、手術後の傷も見えるうえ、他の部位においても機能面で大きなハンディです。
そのため、手術前からそれらのことについて、患者が具体的に理解でき、受容できるよう看護師が援助を行います。
頭頸部の手術を受ける患者は、ボディイメージの変容も大きくなり、機能の損失も重大なことが多く、精神的ダメージも強いものです。
抗がん剤投与・放射線治療の治療準備
抗がん剤や放射線治療では個人差もありますが、副作用が問題となるため、患者に事前に起こりうる副作用についての内容や対処方法、セルフケアについて看護師が説明します。
抗がん剤や放射線治療を行う患者のスケジュールを把握し、患者にも説明を行い、クリティカルパスのある治療に関してはクリティカルパスを使って進めていきます。
抗がん剤治療では抗がん剤の確実投与を行い、投与中の観察を重点的に行いながら進め、創部や腫れなどが治癒していく目安などについても患者に看護師が説明します。
患者の不安を増強させないような援助も、頭頸部外科病棟の看護師の仕事です。
放射線治療を行う患者について
私が勤務していた頭頸部外科病棟では、入院患者の放射線治療を外来で行っていました。
そのため、頭頸部外科病棟で働く看護師は、呼ばれた患者がすぐに治療を開始できるように、患者に予定を説明しておくことも仕事の1つでした。
また、自己にて移動ができない患者の搬送を行い、放射線治療開始前の患者には治療場所の説明や注意事項の説明を行い、円滑に治療が受けられるように準備を行います。
患者の手術後管理
頭頸部外科で患者に行われる手術は色々な術式がありますが、大きな手術では「再建術」と言い、切除部分を大腿などから移植して代用する術式が多かったです。
そのような手術の場合は、移植部分の血流が問題ないかの確認が非常に重要です。
そのため、頭頸部外科病棟で働く看護師は、手術後に頻回な患者の観察を行うことが大切な仕事です。
また、患者の点滴管理や照射部位のケアも看護師が行います。
外科的処置への介助
手術後に患者の創部ガーゼ交換は毎日あり、清潔操作や外科的処置時の介助は、頭頸部外科病棟で働く看護師の仕事の1つです。
また、働く看護師は耳鼻科領域で使用する器械についても把握や取り扱いを覚える必要があり、ファイバーを使った診察も多い印象で、その取扱い、操作方法も覚える必要がありました。
患者への吸引
頭頸部外科病棟では、咽頭腫瘍、喉頭腫瘍といった疾患の方が多く、気道確保をするため気管切開をしている患者が常に入院しています。
そのため、頭頸部外科病棟で働く看護師は、喀痰を除去するため、一日に何度も何度も吸引することが必要であり、仕事内容の1つです。
また、患者の感染予防のため口腔内の清潔保持も重要なケアです。
看護師の体験事例
そのため看護師は、患者の注入食のケアをすることも多くありました。
治療直後の看護(抗がん剤投与に関する管理)
患者への抗がん剤投与日には大きな副作用はありませんが、その後、徐々に口内炎や食欲低下、嘔気などが出現します。
また、副作用に対する処置のため、点滴を施行することも多いです。
頭頸部外科病棟で働く看護師は、その経過を患者へ説明し、理解してもらえるよう努める作業を行うことで以後のセルフケア指導へ繋げます。
さらに、白血球の減少にも注意を払い、感染予防に努めることも重要な看護師の仕事の1つです。
頭頸部外科病棟で看護師として働いて感じたこと
頭頸部外科病棟で私が看護師として働いて感じたことを説明していきます。
頭頸部外科へ異動や転職を考えている看護師の方は、参考にしてください。
ADLは自立している患者が大半だった
頭頸部外科病棟に入院する患者のほとんどは、治療ができる体力のある方で、頭頸部の治療のため、歩行ができる患者が多く、看護師として介助の必要が少ないことが特長的でした。
そのため、手術後は介助が必要なこともありましたが、それも大した労力を要さず、腰痛などの負担は一切ありませんでした。
また、稀にターミナル期の患者を看護することがありました。
ナースコールは多い印象
頭頸部外科病棟では、喉や舌などの口腔内に近い部分を触ることが多いため、吸引を必要とする患者が多く、ナースコールの対応が他の診療科よりも多い印象でした。
さらに発声できない患者も多く、ナースコールがあれば要件が全くわからず、とりあえずはすぐ訪室し、もう一度ナースステーションに戻って必要なものを準備する、と言うことが多かったです。
患者の伝えたいことを読み取る必要があった
頭頸部外科病棟では、色々な理由で会話が困難な患者が多く、患者の伝えたいことを読み取る力が看護師には必要でした。
筆談が第一手段となるためボードは必需品ですが、書くことが面倒に感じている患者、手術後後は身体的にも辛く書く気力のない患者もいました。
喉頭切除術ではもちろんですが、ラリンゴ(喉頭微細手術・喉頭顕微鏡下手術)の後は発声が禁止されたり、放射線治療などで痛みや嗄声が出現し声が出なかったり、舌の手術では上手く発声できなかったりと色々な理由で患者会話が困難でした。
セルフケア指導
セルフケア指導において、患者へどのような形に説明すれば分かりやすいのか、理解してもらうにはどうすれば良いかを看護師として考えることが多かったです。
患者によって個人差があるため、実際に手技を実践してもらいながら、自己で実践できる方法を考えることが重要でした。
手術前、手術後管理を学ぶことができた
頭頸部外科病棟の患者は、手術が頻繁にありましたが、経過も早く、回復などの段階にあわせた必要な看護と不必要な看護をアセスメントしながら看護を進めていくことができました。
そのため、手術前、手術後管理を看護師として学ぶことができ、専門の疾患の知識も増えました。
耳鼻科領域で使用する器具の使い方などの知識があるため、看護師として耳鼻科クリニック等へ転職する場合は経験上有利でした。
看護計画の変更が多かった
頭頸部外科病棟に入院する患者は、手術後の回復が早く、看護計画も数日で変化していきます。
そのため、頭頸部外科病棟に勤務する私たち看護師は、看護計画に多くの時間も割かれるうえ、手術後は看護度も高く、処置にも時間や手間が多くかかりました。
私が勤務していた頭頸部外科病棟では、(頭頸部の特殊性でもありますが)経管栄養を行っている患者が常時10名前後はいたため、経管栄養や内服の準備や片付けも多忙でした。
再発で亡くなる患者が多い印象
私が勤務した頭頸部外科病棟では、再発で亡くなる患者が多かった印象です。さらに、患者が手術で失う機能が大きいことや、ボディイメージの変容に苦しむ患者なども入院していました。
自己で乗り越えるべき問題が多い患者に対して、援助できることが限られていることがあり、看護師としてジレンマを感じました。
患者が失った機能をリハビリで回復できることもありましたが、なかなか回復しない機能も多くあり、社会復帰に向けてどうすることが良いのか悩むことも多かったです。
また、治療を行ってきたが、完治できなくてこれ以上治療できない患者の受け皿がない現状を目の当たりにして、憤りを覚えることもありました。
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まとめ
頭頸部外科病棟は私自身も色々な意味で学ぶことも知ることも多く、実習に来た看護学生が希望して就職することもありました。
頭頸部がんと言う特殊ながんを患って来院する患者がいること、その治療でハンディを背負って日常生活に戻っていく人がいること、普通に過ごしていればあまり遭遇することがないけれど、その存在を知れたことは私にとって大きな意味のあることでした。
看護師として色々な人を看護している中で遭遇するアセスメントの場でも経験値が増えたことで幅も広がったと感じます。
是非、看護師として頭頸部外科病棟に一度はチャレンジしてみませんか。
この記事が、頭頸部外科への看護師の異動や転職時に参考になれば幸いです。
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資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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厚生労働大臣許認可 | 有料職業紹介事業許可番号:13-ユ-314509 (厚生労働省職業安定局: 職業紹介事業詳細) 特定募集情報等提供事業:51-募-000760 |
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