市役所で働く(産業)看護師・保健師の仕事内容と働いて感じたこと
昨今、病院やクリニック以外の場所でも活躍する看護師が増えてきています。
看護師資格を活かせるところは、行政、企業、観光、国際貢献など様々なフィールドがあります。いわゆる「白衣を着ない看護師」です。
医療業界以外の職場でも看護師としての専門性を発揮できるところにやりがいを感じますが、反対に高い専門性の要求にプレッシャーを感じることもあります。
ここでは、私が市役所(行政機関)勤務で経験した産業看護師として仕事内容と、市役所(行政機関)で働いて感じたメリット・デメリットや「やりがい」などについて説明していきます。
執筆・監修看護師- エリア:沖縄県在住
- 保有資格:看護師、保健師、産業カウンセラー
- 経歴:総合病院 、行政機関(市役所)、健診施設
- 診療科経験:外科、ICU、緩和ケア(ホスピス)
私は総合病院の外科と集中治療室で経験を積んだ後、行政機関の産業看護師、健診施設の看護師(たまにツアーナース)を経て現在ホスピス緩和ケア病棟で働いております。看護師と大学院生という二足のわらじでやっております。
市役所で働く看護師の仕事内容
産業看護師とは、その企業の職員の心身の健康管理、サポートをする看護師のことです。(学校の保健室の先生と言えばイメージしやすいのではないでしょうか。)
産業看護師の中でも、市役所に勤務する看護師の1日のスケジュールは以下の通りです。
8:30 | ・朝礼・就業開始 |
---|---|
9:00 | ・社内メールの確認と依頼メール送信 ・外部機関とやり取りがある際には、午前中で確認 |
10:30 | ・前日にアポをとっていた職員との健康相談 ・他課職員や上司との面談 ・産業医面談の準備(産業医面談がある日) ・必要書類作成 ・配布物の印刷依頼など |
12:00 | ・昼食 |
13:00 | ・産業医面談(面談中は産業医と共に入る) ・外部機関への訪問 ・必要書類作成 ・各部署へ印刷物の配布 |
15:30 | ・ラジオ体操、小休憩 |
15:45 | ・産業医面談のまとめ ・グループ会議(不定期) ・各階の休憩室の点検と喚起など |
17:15 | ・業務終了 |
基本的には書類作成やメールといったデスクワークが中心となります。その間に個人面談、産業医面談、他課職員・上司面談、研修、会議が入ってきます。
以下で、市役所で働く看護師の仕事について細かく説明していきます。
市役所内の保健室運営
市役所で働く職員の健康面をサポートするには欠かせない保健室の運営です。
保健室は体調不良の職員が一時的に体を休めるため、そして怪我の際、簡単な処置が行える場所でもあります。
そのため産業看護師は、いつでも清潔にベッドが使用できるよう定期的なベッドメーキングの実施、常備薬や処置具の管理、保健室内にある機械(体重計や血圧計)の管理を行っていきます。
補足説明
体調不良の職員へは身体症状が緩和されない場合、「医療機関の受診を促すこと」や、常備薬を渡す場合にも「過去にその薬を内服したことがあるか」「薬に対してアレルギーはないか」など、問診しながら職員と関わっていきます。
健康診断の実施と結果返し
職員へは毎年一回の健康診断を実施しています。外部機関とやり取りをし、日時や費用、検査項目を決めていきます。
健康診断後はその結果返しを職員一人一人と看護師が面談しながら行っていきます。
検査についての簡単な説明と結果に対する健康指導
結果返しの時、検査についての簡単な説明と結果に対する健康指導を行っていきます。
結果の良し悪しは職員本人が重々承知しているため、結果を頭ごなしに指摘せず、結果に対しての思いを聞くことも大切でした。
からだの相談業務
職員の中には普段の自分自身の体のこと、生活のこと特に生活習慣病や持病について気になることがある際、保健室へ相談に来られる方もおります。
その時、体の悩みに対する健康相談を行っていきます。
必要時には適切な機関へ繋げることも看護師の仕事でした。
こころの相談業務
看護師の仕事として身体面だけではなく、精神面の相談を受けることもあります。
実際に様々なストレスや精神疾患を抱えながら仕事をこなす職員は意外に多いものでした。ストレス解消法の紹介、またストレスが強い場合には面談を実施し、話を聴く機会を設けます。
特に、心理カウンセラーが常時いる企業や行政機関では連携し職員の精神面をサポートしていき、それでも解決困難な場合には心療内科など医療機関の受診へ繋げていきます。
職員への復職支援
職員の中には心身疾患により長期的な休職が必要な方がいます。看護師はその職員に対し復職支援を行っていきます。
復職に際し、通院している主治医から復職可能と判断されても、スムーズに職場復帰できない場合があります。特に、メンタル的な問題で休職していた職員はすぐにフルタイムで働くということが厳しい場合が多い印象でした。
復職支援のため計画を立てる
すぐにフルタイムで働けない職員に対し、復職への計画を立てていきます。2時間、4時間、6時間、フルタイムと少しずつ就労する時間を増やしていきます。
最終的に産業医を含めた復職審議会で復職可能と判断されれば、復職できる、という段階を踏んだ復職支援を行います。
産業医との連携
企業や行政機関は職員の健康維持のため、定期的に産業医による相談時間を設けており、市役所も同様に定期的に相談時間を設けています。
看護師は、産業医と面談時間を調整することや、心身の健康面が気になる職員の情報を共有し、連携した健康サポートを実施していきます。
その際、対象職員と面談調整をしようとしても「産業医面談」と聞くと、面談を断られることもありました。「自分は大丈夫だから。病気じゃないから。」と仕事を優先され、なかなか産業医面談まで足を運んでくれないこともあり、苦戦しました。
根気よく職員と向き合っていく仕事
産業医面談が必要な職員本人だけでなく、職場の上司に対して産業医面談の理解を求めることや、プライバシーの配慮など、看護師として職員のことを考えているという姿勢が問われてきます。
健康への動機づけは一筋縄ではいかないことが多くありますが、根気よく職員と向き合っていくことが大切でした。
健康に関する情報の作成と提示
看護師は、職員へ心身の健康に対して「予防」についても呼びかけていくことも必要です。
そのため、毎月「保健室だより」と称して職員へ気軽に読めて、健康意識を高めていける読み物を作成していきます。
私は、イラストや参考資料をひっぱり、どうしたら理解しやすく興味を持ってくれるかという読み手の気持ちに配慮しました。また、その時代の健康話題についても取り上げ、最新の情報を職員へ提供できるよう心掛けて作成していました。
私が市役所で働いて感じたこと
市役所の看護師として私が働いて感じた「やりがい」やメリット・デメリットについて主観ですが説明していきます。
私が感じた市役所での「やりがい」
市役所で看護師として働いた際、特に健康相談を実施した後に職員の健康への意識が向上し、生活習慣を変えるきっかけへと繋がったことは嬉しく、やりがいを感じました。
職員から、
- 「毎日体重計にのるようになったよ」
- 「最近食事量を減らすことを心がけているよ」
- 「一駅分歩くようにしているよ」
などの、自身の健康について考えるようになったという声はとても励みになります。
職員一人一人が笑顔で働いている姿を見ると、産業看護師として職員の力になれていると実感します。
働いた時の思い出
私が勤務していた市役所には職員厚生会がありました。そこが主体となり、年3~4回は職員向けにイベントを実施していました。
その時には学生時代の部活を思い出させるくらい、課内一丸となって取り組むスポーツイベントが楽しくできたこと、そしてさらに職員同士の繋がりを深められたことが一番の思い出として残っています。
職員の訃報は辛かった
市役所に勤務する看護師として特に辛かったことは、職員の訃報(死の知らせ)です。
関わったケースの中には心疾患による突然死があり、そこでのご家族の思い、同じ課内職員の動揺と悲嘆の思いは痛いほど伝わってきました。
職員への意識付けができず、力不足も実感した
市役所で働く看護師は、職員の生活習慣において改善が必要であれば実践できるよう、健康に対する「動機づけ」を行うことが重要です。職員が普段から心身予防を意識づけてもらうためのコミュニケーションスキルが必要でした。
私は、そのような対象の職員に対して、健康相談を実施できなかったことや、医療機関の受診を促しても聞いてくれないこともありました。伝えたい思いが伝わらないことに歯がゆさと自分の力不足を痛感しました。
そのため、市役所の看護師としての働いていくための壁を感じて仕事をしていたこともありました。
一般的なビジネススキルは向上した
市役所で看護師として働く場合、基本的な挨拶、名刺の受け渡し、言葉遣いなどのビジネスマナーや、相手を尊重した接遇マナーは最低限必要でした。
そのため、私は病院やクリニック勤務ではほとんど実施することがない、事務的作業、ワード、エクセル、パワーポイントなどのパソコン操作、基本的な文章の書き方、名刺交換、電話応対、外部機関と交渉する力が養われました。
看護師として、この様な基本的な事務的スキルを身に着けられることは貴重で、その後の看護師として活躍する場が広がりました。
外部機関とのやり取りは多い
職員への健康サポートは看護師だけではなく、外部の専門機関にも力を借りながら実施していきました。
例えば、腰痛や肩こりの解消法についての講習、禁煙に対する意識向上を目的とした講習会、セルフケア・ラインケアに関する研修など職員向けに様々な講習・研修を実施するためには外部機関とも連携を図ることが多かった印象です。
そのため、外部機関とやり取りをするコミュニケーションスキルは大切でした。
看護スキルは低下しました
市役所の看護師として臨床を離れることで、医療現場で身に着けたバイタルサインの実施、点滴ライン確保、注射、その他患者ケア全般の感覚を忘れてしまいました。
そのため、市役所を退職した後の私は、医療的スキルの衰えが顕著でした。
しかし、市役所の看護師は、職員の健康面のサポートだけではなく、企業の方や行政機関を訪問した人の中で急病人が出れば、緊急の対応を求められることがありました。
臨床で培った観察する力や状況を把握し、迅速に対応する力が必要で、看護師としての専門スキルを発揮することが出来ました。
時間にゆとりがありプライベートも充実できた
私が勤務した市役所では、デスクワーク中心の業務なので、当たり前ですが、体力消耗は臨床(病院勤務)の頃よりも少なくなりました。
また、業務終了後には習い事、家事、家族や友人との時間を持つことも、ゆとりをもってこなすことができました。
そのため、看護師(私)にとって働きやすい環境でした。
まとめ
職員の心身の健康サポートを行う市役所の看護師は、医療現場以外での看護師には専門性はもちろん、それ以外の事務的・パソコンスキルや接遇マナーを意識して業務をこなす力も必要となってきました。
職員とのやり取りに苦戦することもありますが、反対に関わった職員が笑顔で仕事をしている姿がとても励みになりやりがいを感じる職種だと、私は感じています。
市役所の看護師の採用情報は少なく、大きな産業看護師というくくりでも、保健師免許を持っていることが条件としている企業や行政機関は多いのが現状です。
(パートや非常勤などの「臨時枠」であれば看護師免許だけでも採用するところはあると思います。)
看護師として仕事の幅や視野を広げてみたいと考えるのであれば、是非挑戦することを私はお勧めします。
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資本金 | 14,000,000円 |
事業内容 |
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連絡先 | 03-5324-3939 (受付時間:休日、祝日を除く10:00~17:00) |
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